歪んだ月が愛しくて1



「……行かない」

「えっ、何で!?」



何でって言われても行かないもんは行かないんだよ。てか行きたくない。
そもそも美味しいもので釣られてホイホイついて行くほど俺はガキじゃない。



「ねぇ、リカ行こうよ〜。皆で美味しいもの食べよう〜」

「だから行かないって…」



ぐるりゅううぅぅぅ~。



「………」

「………」

「………」

「………」



そう言えば昼飯食べ損ねたんだった…。

恥ずかし過ぎる。



「……ぷっ、くくっ」

「リカ可愛い♡」

「………」



未空と陽嗣先輩は耐え切れずに笑みを漏らす。
会長も声には出さないものの顔を逸らして肩を震わせていた。



「くくっ、腹は正直じゃねぇの。そうと決まれば…」

「っ!?」



不意に身体が浮く。
気付けば俺の身体は陽嗣先輩の肩に担がれていた。
その横で未空は「いいなー」と暢気な声を上げて羨ましそうな視線で陽嗣先輩を見ていた。



「ちょっ…、離して!」

「こーら、暴れると落ちるぜ」



寧ろ落としてくれ!

こんな醜態晒すくらいなら今すぐに!



「リカ腹減ってたんだね。もしかしてお昼まだだった?」

「まだだけど…」

「腹が減っては何とやら、だろう?」



そう言って陽嗣先輩は俺を担いだまま歩き出す。
その横に未空、後ろからは会長がついて来ているのが分かる。



「甘いの好き?」

「……好きでも嫌いでもない」

「決まりだな」

「さっさと歩け」



ああ、もうどうしてこうなるかな。



……よし、決めた。

タダ飯食って満腹になったら即行帰ってやる。



そう決意して抵抗するのを諦めた。


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