歪んだ月が愛しくて1
売られた喧嘩は高価買取
「お待ちしてましたよ立夏くん。さあ、こちらにどうぞ」
生徒会室に着くなり満面の笑みで出迎えてくれた九澄先輩は俺の背中を押してソファーに座るよう促す。
「……お邪魔します」
もうここには来ないと思っていたのに何やってるんだかな…。
「よく分かったな、りっちゃんを連れて来るって」
「俺達何も言ってないのに…」
寧ろ言ってなかったのかよ、と内心悪態を吐く。
俺の両隣を占領する未空と陽嗣先輩が九澄先輩に疑問を投げ掛けた。
「そりゃ分かりますよ。貴方達が尊を連れ戻すだけで何時間も掛けていればどこかで道草食ってるとしか思えませんからね」
「道草じゃないよ。リカをナンパしてたの」
「それを道草って言うんだよ。そもそもお前がトロいせぇだろうが」
「トロくねぇよ。てか元はと言えば尊が勝手にいなくなるからじゃん」
「人のせいにしてんじゃねぇよ」
「どう見てもみーこのせいだよね!?」
……この空気。
やっぱり居た堪れなくなる。
遠めで見てる分にはまだいい。でもこの輪の中に自分がいると思うと堪えられない。
「……あの、迷惑だったら帰りますけど」
寧ろ帰りたい。
でもそれを許してくれない3人は俺を四方から囲むと満面の笑みを浮かべて圧力を掛ける。
「なーに言っちゃってんのリカ?」
「ここまで来て今更逃がすわけねぇじゃん」
「折角来てくれたんですからゆっくりして行って下さい」
有無を言わさぬ圧に耐えかねて無駄な抵抗を諦めた。