歪んだ月が愛しくて1
九澄先輩はすぐに俺の視線に気付いた。
「何ですか?」
「……店」
「店?」
「これ…、どこで買ったんですか?教えて下さい」
俺はフォークを咥えたまま羨望の眼差しで九澄先輩の答えを待った。
「店って…、ケーキのことですか?」
「はい。今度買いに行きたいので」
そう言うと九澄先輩は困ったように微笑んだ。
すると先程までケーキを取り合っていた未空と陽嗣先輩が何故か腹を抱えて爆笑していた。
「リーカ、それって美味しかったってこと?」
「うん。美味しい」
「ん〜、素直なリカもかっわい♡」
「良かったな九澄。りっちゃんに美味しいって言ってもらえて」
俺の肩に腕を回す両サイド。
至近距離過ぎて一刻も早く距離を取りたいところだが聞き捨てならない台詞に意識がそっぽを向く。
「え、もしかして…」
未空と陽嗣先輩の腕を振り払うことも忘れ目の前の九澄先輩を見つめる。
「そう言って頂けると作った甲斐があります」
つまりこのケーキは九澄先輩の手作り。
「……嘘」
「本当です」
マジか。
こんなに美味しいのに手作り?
才能の塊ですか?
「本当だよ。九ちゃんはお菓子作りが趣味なんだよ」
「趣味?」
「くくっ、似合わねぇよな〜」
「似合わなくて悪かったですね」
陽嗣先輩と同意見なのは不本意だが確かに似合わない。
俗に言う王子様フェイスの九澄先輩だから食べている様は絵になるが作ってるところはどうも想像出来なかった。
「未空にせがまれて作ったのがきっかけなんですよ。未空は見た目に寄らず大食いですから」
「確かに」
それには納得だ。