歪んだ月が愛しくて1
「何で?何でダメなの?ちゃんと理由を言ってよ」
「……ごめん」
いつものように誤魔化せない。
未空の好意を無碍にするものだと分かっていても俺は謝ることしか出来なかった。
理由なんて教えられるわけがない。
「理由を教えてよ!入りたくないって理由だけじゃ納得しないから!」
未空はこんな俺に「仲間になろう」と言ってくれた。それはつまり生徒会に入ることと同じことを意味する。適当な関係性でいい友達とはわけが違う。
この際「生徒会に入りたくない」って建前はどうでもいい。ただ自覚してしまったからにはこの先も求めずにはいられないだろう。それが分かっているからこそ距離を取らなければいけないのだ。俺なりの抵抗……いや、悪足掻きなのかもしれないが。
『…ごめん、シロ……』
だってもう、あんな想いはしたくない…、
ガタンッ!!
その大きな音に俺の思考が掻き消される。
視線を彷徨わせて音の出所を確認するとどうやら会長が執務机を蹴ったみたいだ。それも故意に。
その音に対して誰もが口を閉ざした。言葉を発することすら許さない殺伐とした冷たい空間を静寂だけが支配していた。
「帰れ」
そこに会長の冷たい声だけが響き渡る。
重低音でドスの効いた声に一瞬身体が硬直した。
「やりたくないものを無理にやる必要はない」
じんわりと背筋を伝う低音ボイスが耳に残って離れない。
「な、何勝手なこと言ってんだよ!リカは俺が生徒会に誘ったんだよ!」
「そうですよ。未空の気持ちも考えて下さい」
「やる気がない奴がいても足手纏いなだけだ」
ピクッと、その言葉に眉を顰める。
「足手纏いかどうかはやってみないと分からないじゃん!」
「本人が出来ないと言ってんだ。無能な奴は必要ない」
「キッツー。相変わらず容赦ねぇな」
言いたい放題言ってくれるな。
よくも赤の他人にそこまで言えるものだ。
「事実を言ったまでだ」
無意識に拳を握る。
「違うか?」
「………」
挑発的な鋭い黒曜石が真っ直ぐに俺を見据える。
逸らすことが出来ない。
逸らす気もないが、ここで喧嘩する気もない。
……抑えろ。
いくらムカついても相手は一般人だ。無闇に手を出すわけにはいかない。
それに会長が怒ってんのは俺のせいだし、俺が逆ギレしたところで余計に話がややこしくなるだけだ。
「リカは無能じゃない!」
それにこんな俺を庇ってくれる未空にも申し訳ない。
「そうそう。それにもう生徒会強制令は発動してんだぜ。今更なかったことには出来ないっしょ?」
……でも、ごめんな。