歪んだ月が愛しくて1



「だからリカは良いんだって!お礼を言いたいのは俺の方なの!」

「でも、俺も嬉しかったから…、だから言わせて?」

「っ!?」



そう言って俺より少し身長の高い未空の顔を下から覗き込む。
すると未空は顔を真っ赤にさせて正面から抱き付いて来た。



「リカ~♡」

「うおっ、何急に!?大丈夫!?」

「大丈夫だよ〜。リカが可愛いこと言うから離したくないだけだから!」

「か、可愛い!?てか大丈夫なら離れて!くるじぃ…っ」



ギブギブギブ!

首絞まってるから!



「未空、離せ」



会長の言葉に未空の動きがピタッと止まる。



「それ以上やったら死ぬぞ」



その言葉に未空は「え〜、いいところだったのに…」と不貞腐れながらも腕の力を緩めてくれた。
助かった。危うく窒息死するところだった。



「そうそう。公開プレイはやめてくんない」

「立夏くんが苦しがってますよ」

「だってリカが可愛いんだもん。仕方ないじゃん」



全然仕方なくないから。

てか眼科に行くのをお薦めするよ。



「可愛い…?」



すると会長は未空の可愛い発言に険しい顔をして俺の顔をまじまじと見つめる。



「……な、何?」

「………」



会長の詰るような視線が気に入らない。
言いたいことがあるならはっきり言え。



「ハッ」

「喧嘩売ってんのか!?」



未空の可愛い発言は俺もどうかと思うよ。
いくら彼等より身長が低くても俺だって男だ。
可愛いなんて言われても全く持って嬉しくない。
でもだからと言って関係のない第三者に、しかも美形代表の会長なんかに鼻で笑われたくねぇんだよ。



「リカは可愛いよ!尊の目が可笑しいだけだろう!」



可笑しいのはお前だよ。



「王様は素直じゃねぇな」

「あ?」

「まあ、いいじゃないですか。立夏くんの素も見れたことですしね」

「……あ」



忘れてた。



「フッ、忘れたとは言わせねぇぞ」



口元を吊り上げて意地悪そうな笑みを浮かべる会長を見て俺の頭は次第に冷静さを取り戻す。
それと同時に訪れる激しい後悔に自然と頭を押さえた。まさかこんなところで現役時代の癖が出るとは思わなかった。


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