歪んだ月が愛しくて1



『シロ!口悪ぃぞ!』

『………は?』

『だがら言葉遣いが汚いの!』

『へー』

『へー…じゃなくて直してよ!俺のために!』

『お前のため?』

『シロは見た目と口調にギャップがあり過ぎんの!黙ってれば可愛いのに口を開くと残念って言うか…』

『ぶん殴っていい?』

『何で!?お嫁に行けなくなっちゃうよ!俺の!』

『バカか』

『ほらまた〜!』



今回のことは俺の性格故の暴走だ。負けず嫌いな性格が仇となり誤爆したようなものだった。
今思えばあの時アイツの忠告に耳を傾けていればこんなことにはならなかったかもしれない。正に後悔先に立たずとはこのことだ。
でも一度決めたことを撤回するつもりはなかった。これも間違いなく意地だ。入るのも辞めるのも他人に決められて素直に従うような俺ではない。ただ本来人付き合いが苦手な俺がこの空気に馴染めるかは別問題だ。とりあえず適度な距離を保って接しよう。何事も無難が一番だ。特に今の俺にとっては。



「でも猿が喜ぶ気持ちも分かるぜ。りっちゃんが生徒会に来てくれて俺も嬉しいからよ」

「でしょう!俺がリカを誘ったんだからな!」

「新しい仲間が増えるんです。僕だって嬉しいですよ」

「………」



そう言われて先程までの後悔が一気に払拭した。
と言うよりも後悔以上のモヤモヤが新たに湧いて出てしまった。



「あれ?もしかして驚いてる?」

「いや、だって…」



頭の中を色んな感情が飛び交う。
目に見えないそれに戸惑っていると、不意に陽嗣先輩の大きな手が俺の頭の上に降りて来た。



「歓迎するぜ」

「ようこそ生徒会へ」

「これからも宜しくね、リカ!」



懐かしい感覚に目を細める。
孤独から自由を知った時の昂揚感によく似ている。
アイツと初めて会った時もこんな感じだった気がする。



「退屈させるなよ」



後悔しても遅い。

もう後戻りは出来ない。



「そっちこそ、今更返品出来ませんよ」

「証明するって大見え切ったからには実行してもらわねぇとな」



だから最後の境界線だけは守ってみせる。

引き返せるギリギリのラインまで抗ってみよう。



「またそんな言い方をして…」

「本当うちの王様は素直じゃねぇな」

「そんなんだといつまで経ってもリカに嫌われたままだよ」

「誰がいつ好かれたいなんて言った?」

「またまた、強がっちゃって〜」

「寝言は寝て言え」



ゆっくりと瞳を閉じれば、そこは黒と赤が支配する世界へと繋がる。
足元を埋め尽くす多くの亡骸がピラミッドのように積み上げられ、その頂にある玉座には黒いシルエットに覆われた奴が頬杖を付いてこちらを見下ろしている。
その亡骸の中には俺の大切なもの達、そしてアイツも姿も…。
途端、背筋に冷や汗が伝う。



「あ、あの…っ」



……分かってる。

忘れてなんかない。忘れられるわけがない。



「ん?」

「どうしましたか立夏くん?」



あの日、嫌と言うほど思い知らされた。

自分と言う存在がどれほど異質で、醜悪で、害悪で、



「俺、藤岡立夏って言います。今日から宜しくお願いします、……今更ですけど」















人々に不幸を齎す“死神”だってことを―――。


< 129 / 552 >

この作品をシェア

pagetop