歪んだ月が愛しくて1
◇◇◇◇◇
立夏と未空が去った後の生徒会室は再びざわつきを取り戻していた。
「まさか王様に喧嘩売るとはな」
「ここの生徒では考えられないことですからね」
二つの視線が交わる。
その視線の先には覇王の頂点たる王が長い足を組んで踏ん反り返っていた。
「……何が言いたい?」
その視線に、言動に、王は怪訝そうに顔を歪める。
「良かったですね、思い通りに事が進んで」
「魂胆丸見えだぜ」
それは彼等に王の思考が読み取れるように王もまた彼等の思考が手に取るように読み取れたからだった。
「にしてもちょっと強引だったんじゃねぇの?」
「あ?」
「貴方があのような手に出るとは少し意外でした」
「……言いたいことがあるならはっきり言え」
「そうですか、では遠慮なく。貴方が立夏くんを生徒会に入れたのは未空のためですか?それとも…」
途端、穏やかな瞳が鋭さを増す。
「自分のためですか?」
「………」
九澄の容赦ない言葉が尊を追い詰める。
しかし尊はそれに動じることなく正面から九澄と対峙する。
しかし尊は何も言わない。何かを飲み込むかのように飲み掛けのコーヒーを一気に飲み干した。
カチャと、カップをソーサーに置く音が室内に響く。
不意に尊の口元が弧を描く。
すると尊は突然ソファーから立ち上がってドアの方へと歩き出した。
「僕の質問には答えてくれないんですか?」
その言葉に尊の足が止まった。
そして振り向き様、彼は堂々とさも当たり前のようにこう言い放った。
「自分のために決まってんだろう」
そう言い残して尊は生徒会室を後にした。
残された2人は互いに顔を突き合わせて溜息を吐いた。
「……命知らず」
「性分なんですよ」
「嫌な性分だこと」