歪んだ月が愛しくて1
不意に視線を感じる。
どこから…、なんてすぐに分かった。
先程までベンチに座って談笑していた生徒達が俺と哀さんを見てひそひそと小さな声で何やら話していた。
「……何あれ?」
「きっと例の外部生だよ」
「あんなド庶民が?」
「ああ言うのがウロウロしてるだけで学園の品格が下がるんだよね」
「それな」
「場違いだってことに気付いてないとかウケるんだけど」
そんなに庶民が珍しいのかね。
まあ、場違いなのは自覚しているが。
するとそれに気付いた哀さんが彼等に対して鋭い視線を送っているのが見えた。
「……立夏様、少々お待ち下さい」
「待った」
咄嗟に哀さんの腕を掴んで制止する。
どうやら哀さんにも聞こえていたらしい。
「立夏様、何故…」
「いいですよ、慣れてるから」
「そう言う問題ではございません。彼等の発言こそ学園の品位に欠けます。何より立夏様のことをあのように言うなんて…」
「本当のことだし仕方ないですよ」
庶民だし、場違いだし。
「それに言いたい奴には言わせとけばいいよ」
「しかし」
「哀さん」
こんなの一々気にしてたらキリがない。
「案内、お願いします」
「……こちらです」
本当にキリがない。
「―――にしても綺麗な顔してたな」
「うん…。綺麗過ぎて声掛けられなかったよ…」
「レベル高ぇ」
「覇王様並みじゃん…」