歪んだ月が愛しくて1



A県の山奥にある聖楓学園は東都ドーム50個分の大きさを有する広大な敷地に幼稚舎から大学、更に学生寮や職員寮、そしてちょっとした娯楽施設までも内包する巨大学園都市として知られている。
煉瓦造りの正門を潜った先にある中央広場を経由して初等部から大学までの校舎に自由に出入りすることが出来るが、一つ一つの校舎はかなり距離があるため徒歩で移動する者は少なく、通いの生徒であれば事前に申請した車両で自宅から校舎の前まで乗り付けることが出来るらしい。つまり俺のように公共機関を利用する者は論外と言うわけだ。



そして哀さんの後に続いて足を進めること約20分。



「こちらです」



真っ白な建物の前で立ち止まった哀さんに倣い俺も足を止めて目の前の立派な建物を見上げた。



「ここが…、高等部の校舎ですか?」

「はい」



哀さんは目の前の真っ白な建物が高等部の校舎で北棟と呼ばれていることを教えてくれた。
この北棟は外部から入って来た時に真っ先に辿り着く校舎で、各クラスの教室や職員室、朝食や昼食時に利用出来る食堂や購買部が入っているらしい。
聖楓学園は創立50年くらいと聞いていたが、外壁が真っ白で光の反射によっては窓ガラスとほぼ同色の透明に近い白に見えるため、新設されたばかりの学校ではと勘違いしそうになるほど真新しい印象を受けた。
いくら定期的にメンテナスや清掃が入ってるとしても、とてもじゃないが50年も経ってるようには見えなかった。



「では校舎の中をご案内致します」

「………」



俺の前を歩く哀さん。

多分、彼女は気付いていない。



(ここでもか…)



様々な視線が交差する。

その中心にいるのが自分なんて最悪だ。



「立夏様?」



どこにいても付き纏って来る。

もう慣れたけど。



「……今行きます」



本当、キリがない。


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