歪んだ月が愛しくて1



「リカは面白いね」



面白い?

どこがだ?



「……何、急に?」

「急にじゃないよ。初めて会った時からそう思ってた」

「どこ見て言ってんのそれ?」



生徒会メンバーの印象を聞かれたから素直に答えたまでだ。会長に関しては悪口っぽくなってしまったが。



「ぜーんぶ」



適当か。



「あ、その顔は信じてないでしょう?」

「うん」



面白いなんて初めて言われた。

……いや、紀田先生にも言われたか。



(それに、アイツにも…)



あの時も自分の何が面白いのか分からなかった。
でもアイツは俺を見て面白いと言いながら嬉しそうに笑った。
まるで俺の全てを受け入れてくれるような優しい笑顔で。



「面白いよ」



その声にハッと我に返り隣にいる未空を見た。



「だって面と向かってそんなバカ正直に言ってくれるのはリカだけだったから」

「……俺だけ?」

「紀田ちゃんから言われなかった?生徒会に近付くなって」

「あー…」

「あははっ、やっぱり。でも仕方ないんだ。そう言われても仕方ないことを俺達はやって来たんだから」

「仕方ないって…」

「引いちゃった?」

「………」



そう言って未空は寂しそうに笑った。

今度はバカ笑いじゃなくて自傷的に。



それが何だかムカついて自然と身体が動いた。



バチンッと、廊下に乾いた音が木霊する。



「リ、カ…」



未空の頬を叩いた。勿論平手打ちで軽く。
未空は突然のことに目をパチクリさせて固まっていた。



「見縊るな」



その表情は次第に驚愕から困惑、困惑から不安へと変わっていく。



「昔のことなんてどうでもいい。俺が一緒にいるのは今の未空だ」



仕方ないことって何とか、何をやったらそう言われるのとか、聞きたいことは色々あった。



「昔の未空達が何をして来たか俺には分からない。生徒会のことだってまだよく分かんないけど」



でも未空があまりにも寂しそうに笑うからそんなことどうでもいいと思った。



「俺は自分の目で見たものしか信じない」



今未空に伝えなきゃいけないのは、たった一つ。



「だから、引かないよ」

「、」



未空の肩がビクッと跳ねる。
そっと手を伸ばして未空の頬に触れた。
叩いてしまったところに触れて熱を冷ますように。


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