歪んだ月が愛しくて1
俺の言葉に未空は盛大な溜息を吐いた。
「無自覚最強ぉ〜」
「だから意味分かんないんだけど。日本語で話してくれない?」
「……ま、仕方ないか」
すると未空は俺を抱き締めたまま顔だけを少し離して右手で俺の眼鏡に触れた。
「これの威力半端ね、」
「あ…」
不意に眼鏡を取られてしまった。
未空の瞳に素の俺が映し出される。
「………」
「………」
「………」
「………何か言えよ」
「………」
無視か。
「そ、れ…」
「それ?」
それってどれだよ、と内心突っ込む。
「……ヤバい」
「えっ!?」
主語のない未空の台詞に何事かと内心焦ると、未空は口元を手で隠してパッと俺から視線を外した。
すると予想外の言葉が耳に届いた。
「綺麗過ぎ…」
独り言のような小さな声。
俺の耳に届いていたもののつい聞き返してしまった。
「………は?」
「ヤバい。照れる…」
「何が?」
「うわぁ、こっち見ちゃダメ!」
「何でだよ!?」
「ああっもうほら!眼鏡返すから!はいっ!」
俺の顔に強引に眼鏡を掛ける未空は俺を抱き締めていた力を緩めて俺から距離を取ると視界を覆うように両手で自分の顔を隠した。
「眼鏡……うん、眼鏡いいね。それ絶対外しちゃダメだからね」
「何で?」
「何でも!」
未空は両手で顔を隠しながら自身を落ち着かせるために「うん絶対ダメ、眼鏡必須」と何やらブツブツと独り言を漏らしていた。意味が分からん。