歪んだ月が愛しくて1
「……リカって本当に目悪いの?」
「何で?」
「だってそれ度入ってないじゃん」
「あー……確かに」
「何で掛けてんの?」
「掛けない方がいい?」
「ダ、ダメダメダメ!絶対掛けててお願いだから!」
「……ぷっ、何かの標語みたい。ウケる」
「笑わないでよ!俺はマジで言ってんだからね!」
「ごめんごめん」
そう言って俺がまた笑うと未空は頬を膨らませながら「こっちはマジで言ってんのに…」と拗ねる始末。
そんな未空に俺は眼鏡を掛けることになった経緯を話した。ただ文月さんの名前は伏せて紀田先生が用意してくれたってことにして。
「へー、あの紀田ちゃんがね…」
「あの?」
その意味深な言い方が妙に引っ掛かった。
「うーん…、これは悪口?チクリ?」
「悪口?」
何の?
「でも紀田ちゃんも俺達のこと話してたみたいだしお相子だよね」
「……よく分かんないけど、無理に話さなくてもいいから」
後が面倒臭そうだし。
「いんや、話す」
結局話すんかい。
そんなツッコミも虚しく未空は紀田先生について語り出した。
「紀田ちゃんはね、見ての通り不良教師なんだよ。学生時代はどっかの暴走族に入ってたとかで色々と悪さしてたらしい。教師になったのも俺がここに入学してからだから……3年前かな。それまではホストやってたんだって」
「ふーん」
そう言えば元ホストとか言ってたな。
ヤバい、興味ない。どうでもいいんだけど。
強いて言うなら…、
「しかもここの卒業生」
「そうなの?」
「らしいよ。そん時の生徒会長が今の理事長ってわけ。何でもホストだった紀田ちゃんを理事長が教師の道に誘ったんだって」
「文月さんと紀田先生が…」
紀田先生が言った腐れ縁ってこのことか。
でも気になるのは紀田先生が昔どこかの族に入っていたって部分だ。無関係なところならいいんだが…。
「文月さん?それって理事長のこと?リカって理事長とも知り合いなの?」
「、」
その言葉に心臓が跳ねた。
しまったと思った時には既に遅く無意識に文月さんの名前を口にした後だった。
「いや、別に…」
やべ、何て誤魔化そう…。
「ん?」
「だからその、知り合いって言うか…」
背筋に冷や汗が伝う。
……どうしよう。
言い訳が思い付かない。
ここで文月さんとの関係がバレたら今までの苦労が水の泡だ。アイツに口止めした意味がない。
それに文月さんと会長が仲悪いってことはどっちつかずの俺の存在って不味くないか?いや、非常に不味い。
間違いなく文月さん側でないことは言い切れるが、覇王からしてみたら一応親戚関係にある俺が生徒会にいるってことだけでスパイと勘違いされても可笑しくない状況だ。断じて違うけどね。
どうしたものか…、
そんな時、背後から聞き覚えのある声が降って来た。
「駒鳥…?」