歪んだ月が愛しくて1



「……君なら、分かるはずだよ」



不意にアゲハの手が俺の頬に伸びる。



バシッと。



「……は?」



アゲハの手を払い落として下から睨み付ける。



俺なら分かる?

どう言う意味だ?



初対面でないとは言えまともに言葉を交わしたのは今日が初めてのはず。
そんな彼に俺の何が分かると言うのか。



「君なら分かるだろう?―――大切な者を失った、君ならね」

「、」



……分かるはずがない。

だって俺ですら自分のことが分からないのに他人のコイツなんかに分かるはずがないんだ。



「それに、」



ビクッと、無意識に肩が跳ねる。



触れられるのは罪か、罰か。

厳重に鍵を掛けたはずの蓋が外れ…―――



「僕が一番許せないのは僕自身だからね」

「……え?」



外れ、なかった。



「上に立つ者としてあの時の判断が本当に正しかったのか、正直今でも分からない」

「……分からないって、何が?」

「あの時、君と戦った時の僕は本当にチームの総長として仲間を助けるために拳を振るったのか、それとも僕個人の好奇心故に君に挑んだのか。もし後者であれば僕は総長失格だ。仲間を守ることよりも僕個人の欲を優先してしまったのだからね。そのせいで仲間を危険な目に合わせて、挙句にチームは解散。仲間や先代方に顔向け出来ないよ」



はぁ…と、アゲハは壁に手を付いて大袈裟に溜息を吐いた。
何とも態とらしい言動に言葉の真意を確認する気にもなれず壁に背中を付けて両手を組み次の出方を伺っていた。



「………」



……何も触れられなかった。

罪も、罰も、厳重に鍵を掛けたまま閉ざされている。

触れられなかったのは良かったがまだ安心は出来ない。



「ただこれだけははっきりしている」



しかし次の瞬間、俺はアゲハの言葉に度肝を抜くことになる。



「僕等は負けた。それと同時に僕は君と言う光に酷く焦がれてしまった」










………は?










はぁぁあああ!?


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