歪んだ月が愛しくて1
「まだ何か聞きたいことはあるか?」
「……ある」
「そうか…」
そう言うと頼稀は「邪魔するぞ」と言って靴を脱いでリビングの方へと進んで行く。
俺がその後を着いて行くと頼稀はリビングに備え付けのソファーに深く座って寛いでいた。
「何だ、まだ段ボールのままか」
「あー…何か面倒臭くてそのままにしてた」
「手伝ってやろうか?」
「そんなことより、俺が言いたいのは…」
「分かってる。お前の正体、そしてお前に関する情報を口外するなってことだろう?」
「……分かってるなら頼む。俺のことは誰にも言わないで欲しい」
「………」
まだ、知られるわけにはいかない。
今はまだ彼等と向き合うことなんて出来ない。
「……分かった」
その声にゆっくりと顔を上げると頼稀の瞳が真っ直ぐに俺を見つめていた。
その瞳が俺に対して何を伝えたいのか何を求めているのかは分からないが、その真剣な眼差しにどこか安心している自分がいた。
「そもそも言うわけねぇだろう。だからあの時も態と知らねぇふりしてやったのに」
ああ、だからか。
あの時感じた違和感は頼稀なりの気遣いだったのか。有難いけど分かり辛いな。