歪んだ月が愛しくて1



「……それ、本気で言ってんのか?」



頼稀の冷やかな瞳が俺を射抜く。
そんな頼稀に首を傾げると頼稀は態とらしく深い溜息を吐いた。



「立夏、お前本当に自覚しろよ。そんなんだとお前みたいな奴はここじゃすぐ食われるぞ」

「食われる?」



あれ、そのフレーズ…、前に文月さんにも言われたような気がする。
あの時は適当に聞き流したが頼稀に言われると何だか真実味を帯びて来る。
今のご時勢そんなことはないと思うが一昔前なら………有り得るのか?



「人間って食うと美味いの?」

「(重症だな…)」



頼稀は再び盛大に溜息を吐く。
どうやら完全に呆れられたらしい。何でだ?



「はぁ…、そうじゃねぇよ。俺が言った“食う”ってのは食べる方じゃなくてヤる方。つまり犯すって意味だ」

「……は?」



ヤる?

殺るじゃなくて?



「いいか、この学園は幼稚舎から大学までエスカレーター式でその上山奥にあるだろう。こんな隔離された空間だと女と出会うチャンスも早々ねぇし、金持ちの親共にとっては跡継ぎに悪い虫が付かないようにするための予防策でもあるからこの伝統は昔から変わってない。だから自然と意識する対象が女から男に変わる連中が出て来るんだよ」



女から男に変わる?

え、待って。それって…。



「じゃ、じゃあ、ここの奴等って…」

「学園の大半が同性愛者の集まり。簡単に言えば皆ホモかバイなんだよ」

「………」

「驚かねぇのか?」

「……いや、驚いてるよ」



寧ろ驚き過ぎて言葉が出て来ない。
いくら閉鎖的な空間に閉じ込められているとは言えそう単純に同性を恋愛対象として見れるだろうか。不思議。まあ、正直どうでもいいが。
自分に影響がなければどうぞ勝手にやってくれって感じだし、何より俺の初恋の相手はあの人なんだから否定したくても出来るわけがなかった。



「でもここの連中がホモやバイだとして俺に何の関係があるわけ?」

「バカ、関係大有りだ」

「だから何で?」

「お前が生徒会に入ったからだ」

「あー……成り行きで?」

「何で疑問形なんだよ」



成り行きなのは嘘じゃない。
会長がムカついたから開き直ってみたらこう言う結果になってしまったのだ。



「あの会長様に啖呵切ったらしいな、命知らずな奴」

「何で知ってんの?」

「俺は“B2”の?」

「………諜報部隊の隊長サマ」

「気になったから色々と嗅ぎ回ってたんだよ」



マジで忍者だな。


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