歪んだ月が愛しくて1
「そういや、神代財閥って何?」
ふとした疑問を投げ掛けると頼稀は目を丸くして俺を見たがすぐにお得意のポーカーフェイスに戻って淡々と俺の質問に答えてくれた。
「何だよ、唐突に」
「いや、ちょっと気になって…。生徒会長ってその神代財閥の人間なんだろう?神代って何?そんなに凄いの?」
「凄いなんてものじゃない。次元が違う」
「すんげー金持ちってこと?」
「そんな一言で済めばいいがな」
「済まないの?」
「神代財閥は世界に名を轟かせる大財閥で日本を代表する七大企業のトップだ。そこら辺の成金とはわけが違う。この学園で…いや、日本で神代の名に逆らえる者はまずいないだろうな。財界だけでなく政界にも大きな影響力を及ぼし皇族だって無視出来ない存在。神代会長はそこの次期後継者だ。つまり神代会長に逆らえばお先真っ暗確実ってわけ。ここまで言えば頭の悪い立夏くんでも分かるよな」
「………」
「立夏?」
「キ、」
「キ?」
「………キッモ」
「(相当やり合ったみたいだな…)」
金持ちとは思っていたがまさかそれほどまでとは思わなかった。
「マジかよ…」
俺、さっき会長に何やった?
「だから言っただろう、命知らずだって。あの人に逆らって五体満足だった奴はまずいない。実際あの人に喧嘩売って返り討ちに遭った連中は何人も退学になってるからな」
「退学…」
それを口にするのは簡単だ。実際に俺も生徒会室で大見得切ったし。
文月さんに言われるがまま強引にこの学園に入学させられて初めは退学になろうがどうでもいいと思っていた。
でもよく考えたら俺が退学になって一番悲しむのは兄ちゃんだってことに気付いてその言葉の重さを思い知らされた。
そう思ったら途端に胸が痛くなった。
その痛みは兄ちゃんを想ってのものか、それとも退学にならなかった安堵感からかは定かじゃないけど、簡単に言っていい言葉じゃないことは実感した。
「因みに皇先輩の家も神代家同様表御三家であり日本七大企業の一つだ。それと…」
「それと?」
「……いや、何でもない」
「言い掛けて止めるなよ」
すると頼稀は何かを誤魔化すように俺の頭に手を伸ばしてわしゃわしゃと人の髪を撫で回した。
「いいんだよ今は。てか俺が心配してんのはそんなことじゃねぇよ」
……心配?
その単語に眉を顰めて頼稀の言葉を待った。