歪んだ月が愛しくて1
「お前、覇王のことはどう思った?」
覇王とは生徒会メンバーの名称。
「どうって…、顔面偏差値が異常に高い集団?」
「だから何で疑問形なんだよ」
「いや、マジで格好良いと思ったのは本当」
男の俺でも素直にそう思ったくらいだ。
あの中に放り込まれた至って平凡な顔の俺ってスゲー可哀想な奴じゃね?
しかも俺的にどこにでもいるような平凡な顔立ちだと思ってたけど文月さんから見たら眼鏡しなきゃいけないほど酷い顔らしいし。
「まあ、お前の言う通り無駄に顔が整ってるのは事実だ。だから親衛隊も多い」
無駄って…。
やけに辛口だな。
「その親衛隊って何?ファンクラブみたいなもん?」
「そんなもんだ」
「ふーん…」
あれだけ良い人材が揃ってれば当然か。
同じ男としては悔しい限りだが。
「お前さ、マジでもう少し危機感を持てよ」
「危機感?何で?」
不意に頼稀の指が俺の額を弾く。
「痛っ!?」
「いいか、よく聞けよ」
いや、その前に謝ろうよ!
「親衛隊がいるのは主に生徒会、そして各組の寮長とランキング上位者。その中でも覇王の4人は別格で一般生徒が簡単に近付ける奴等じゃない。生徒会に入るにも人気投票の上位者若しくは覇王の推薦がないと入れないってのにあのバカは何を考えてんのか知らねぇがお前を生徒会に推薦した。1年の…、しかも外部生のお前をだ。当然それをよく思ってない連中は多い」
バカと言うのはきっと未空のことだろう。
この1週間しつこかったのは周知の事実だからな。
「歓迎されてないのは分かってるよ」
「相手にする必要はない。言いたい奴には勝手に言わせて置けばいい」
「そのつもり」
無駄に時間を費やすつもりはない。
一々相手していたらキリがない。
「お前がそのつもりでも連中は執拗に絡んで来るはずだ。あの4人のお気に入りとなれば尚更、親衛隊じゃなくても興味がある」
「お気に入り?ないない」
少なくとも会長には嫌われたはずだ。
「……鈍感」
「何が?」
「何でもねぇよ。兎に角覇王親衛隊には気を付けろよ」
「………」
頼稀の言葉に眉を顰める。
気を付けろとか、心配とか。
さっきから一体何が言いたいのか分からなかった。