歪んだ月が愛しくて1



立夏Side





あれから哀さんに学園内を案内してもらったはいいが。



「全然分かんねぇ…」



城?宮殿?迷路?

どちらにせよ学校の規模じゃない。

哀さんと別れたら確実に迷子になりそうだ。



「始めのうちは迷うこともあるかと思いますがすぐに慣れると思います」

「俺は無理だと思います」

「大丈夫ですよ、立夏様なら」

「………その根拠は?」

「立夏様はそう言う方ですから」

「ハードル高ぇ…」



哀さんの中の俺ってどんだけスーパーマンだよ。



「念のためにパンフレットもお渡しして置きます」

「パンフって…」



学校見学に来た人みたいじゃん。恥ずかしい。



哀さんからパンフレットを受け取って改めて構内図を確認する。
高等部は上空から見ると「ロ」の真ん中に「・」が付いた形をしていて、北棟、東棟、西棟、南棟、中央棟の五つの校舎に別れている。
「ロ」の形をしている北棟・東棟・西棟・南棟の四つの校舎は正確には繋がっておらず、行き来するには一度校舎を出なければならない。また四つの校舎はある程度離れていてそれぞれ中庭を経由して移動する。
最初に説明された北棟は各クラスの教室や職員室、集会などで使用する大講堂、朝食と昼食時には誰でも自由に利用出来る食堂や購買部が入っている。
次に案内された東棟は体育館や室内プール、主に運動部で使用する道場や部室、誰でも自由に利用出来るトレーニングルームが完備されている。また東棟の横には授業や体育祭で使用する広大なグラウンド、野球場やテニスコートなどが併設されていた。
その次に案内された西棟は音楽室や調理室、化学室や実験室などの授業で使用する教室の他、主に文化部で使用する教室が入っている。
最後に案内された南棟は国内の教育機関で最大級の規模を誇る図書館が3階建ての校舎に丸々と内蔵されている。
そして唯一案内されなかった中央棟は真ん中の「・」の部分に位置し、理事長室や生徒会室などの特別な役職に就いている者しか出入りすることが出来ない棟になっている。
他にも学生棟と呼ばれる学生専用の寮があるらしいが…。



「……無理」



こんなにあんの?

絶対覚えらんねぇよ。

校内で迷子放送とか絶対嫌だ。

しかもざっくりしか案内してもらってないのに何が大丈夫だよ。無茶振りも大概にしてくれ。



「もし迷われてしまったら私にご連絡下さい。すぐに駆け付けて参ります」

「……そうならないように頑張ります」



ぐるりと、改めて校内を見渡す。
やっぱり外観のイメージ通り校内の壁も白に統一されていた。
汚れ一つないくらい綺麗な校内だがそれが逆に落ち着かない。
加えて金持ちのボンボンのための学園だけあって無駄に金を掛けていた。
校内の至るところには高価な壺や絵画、そして監視カメラまでもが設置されていた。
何のための監視カメラか知らないが、盗難防止のためだけならこんなところに高価なものを置かないで金庫にでも保管して置けばいいのに、と思ってしまうのは庶民故の感覚だろう。



「……無駄」



先程の中央広場とは違い鑑別所や感化院とも思える息苦しさに早くも気分が滅入りそうになる。


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