歪んだ月が愛しくて1
食堂に着いて辺りを見渡すと案の定殆どの席は埋まっていた。
「やっぱりこの時間だと混んでんな」
「席空いてる?」
「腹減ったぁ〜」
3人の言葉がグサグサと胸に突き刺さる。
「どうしたのリカ?何か元気ないね?」
「いや、俺が寝坊したからこんなことに…」
「気にすんな」
「そうそう、未空もよく遅刻するしな」
「誰だってそう言う時はあるよ!」
「「お前が言うな」」
聖学に入学して数週間が経過し、3人のコントも今ではすっかり見慣れた光景となった。
相変わらず仲良いな…。
そんなことを考えていると不意に頭の上に重みを感じた。
顔を上げた先にいたのはこの中で一番背の高い頼稀が俺を見下ろしていた。
「……何?」
手が重い。
「……変な顔」
「は?」
え、喧嘩売ってんの?
この状況で?
「それ」
「それ?」
それってどれだ?
主語がねぇと会話成立しねぇんだよボケ。
「いや、その方がお前らしいぞ」
「……ごめん、意味分かんない」
「バカか?」
「バカ!?」
聞き捨てならない。
「つまり、気にすんなってこと」
すると希が俺の肩に腕を回して距離を詰めて来た。
「立夏は一々気にし過ぎなんだよ。少しは未空を見習って図太くなったら?」
「そうそう俺を……って、それどう言う意味!?」
「そのまんまだろう」
「図太いのも才能だぜ」
「才能?え、俺凄いの?」
「凄い凄い、超スゲーよ(ある意味)」
「才能だな(ある意味)」
「マジか!俺ってスゲー!」
噛み合ってるようで噛み合ってない会話に耳を傾けながら3人の様子を遠巻きに眺めていた。
「……凄い、な」
未空の声はよく響く。
だからと言って女性のような甲高い声でも、特別透き通る声ってわけでもない。無駄に声がでかいだけかもしれない。
でも俺の耳には確かに届いていた。
「あ、席空いたって!早く行こうリカ!」
『シロ!』
「ほんと…」
煩くて、耳に付いて。
嫌ってくらい、その声を拾ってしまう。