歪んだ月が愛しくて1
それからすぐに席へと案内され、席に着いたのとほぼ同時に食事が運ばれて来た。
「………何、それ?」
ポカンと口を開けたまま未空に尋ねる。
「朝飯!」
「それは分かる」
俺が聞きたいのはその手に持っているものについてだ。
「え〜、じゃあ丼のこと?」
いや、それも見たら分かるから。
俺が聞いてんのは何で丼三つも抱え込んでんのかってことなんだけど。いつもは一膳じゃん。
「……それ、全部未空が食うの?」
「うん!」
「未空って大体それだよな」
「朝からそんなガッツリ…」
「そう?」
「どっからどう見てもそうだろうが」
……ダメだ。
考えただけで胃が凭れそう。
「お前もよく飽きないな」
「いつもより我慢した方じゃない?」
後から合流した葵が未空のトレーの中を見て苦笑しながら席に着いた。
え、これで我慢してんの?
どんだけ胃袋でかいんだよ?
「腹壊すよ…?」
「大丈夫!」
あっそ…。
でも言われてみればこの間もモーニング+丼だったな。
え、じゃあ何?これが通常運転ってこと?
「お前は未空を見習えよ」
「え?」
「それ」
その言葉と同時に頼稀が俺の手元をチラッと見る。
正確に言えば俺の前に置いてあるカップに視線を集中させていた。
「少な過ぎ」
何がと聞こうと思ったが次の希の一言で全てを理解した。
「ホットコーヒーだけで朝飯になんの?」
「リカは少な過ぎるよ!もっといっぱい食わなきゃ力出ないよ!」
「……別に少なくないよ。いつも朝飯食べないし」
「確かにいつも飲み物しか飲んでなかったけど…」
「その日だけってわけじゃなかったんだね」
「腹減ってないから?」
「それもあるけど…」
「けど?」
「……兎に角、俺は平気だから」
「ダメだよリカ!いくら腹が減らないからって少しくらいは我慢して食べなきゃ!俺だっていつも我慢していっぱい食べてんだから!」
「「「嘘吐け!!!」」」
和気藹々と談笑する4人を視界から外してカップに口を付けた。
……平和だな。