歪んだ月が愛しくて1
「で、最近どうなの?」
「どうって?」
俺はコーヒーを口に含みながら希の言葉に耳を傾けた。
「何って生徒会のことに決まってんじゃん」
「あー…」
何となく分かっていたけど。
「……あれから行ってない」
「え、行ってないの?」
「何で?」
「別に理由はないよ」
俺が適当に誤魔化そうとすると未空はすかさず俺達の間に割って入って来た。しかも食い気味で。
「そう!皆聞いてよ!俺何度も誘ってるのにリカってば心の準備が出来てないとか用事があるとか言っていつも逃げるんだよ!」
「逃げてない」
深く関わらないようにしているだけ。
「じゃあ何で来てくれないのさ?」
「……用事ないから」
「え?」
「仕事はする。でも特に用もないのに生徒会室に行くのは…「ダメ!」
……遮りやがったな。
「用がなくても生徒会室に来ること。これ生徒会の鉄則です」
嘘だ。
「い…「嫌じゃありません!はい、けってーい!」
言わせる気ねぇなコイツ…。
「だから今日は絶対に来てね。皆も待ってるんだから」
「皆?」
「皆は皆だよ。3人ともリカのこと待っ…「嘘」
絶対に嘘。それは有り得ない。
特に会長なんて絶対どうでもいいと思ってるよ。
もう眼中にもないって感じで今頃清清してるはずだ。
ああ言う連中は興味持つのも早いけど飽きるのも早いからな。
まあ、俺としてもその方が有難いけど…。
「嘘じゃないよ!」
バンッと、未空がテーブルを叩く音が食堂中に響き渡る。
「皆待ってるもん!九ちゃんもヨージも尊だって…。リカが来てくれるのをずっと待ってる!」
「……何で?」
……そんな顔しないでよ。
勘違いしそうになる。
「リカと一緒にいたいからだよ!前にもそう言ったじゃん!」
言われた。
それは覚えてる。
ただそれを安易に鵜呑みにするのは俺の性格上無理な話だ。
「他に理由なんてないよ。理屈じゃないんだから」
随分と自分勝手なりくつ……あ、理屈じゃないんだっけ。
未空のくせに格好良いこと言いやがって。
「だから今日は絶対来てね!皆も楽しみにしてるから!」
……自分勝手だけど、嫌いじゃないんだよな。
『なーに変な顔してんのさ?俺達もう仲間っしょ!』
嫌いになれない。
どうしても、憎めない。
『明日もここで待ってるからな!』
こう言うバカ。
まるで誰かさんみたいで嫌いじゃない。
「相変わらずモテモテじゃん、未空限定で」
「……嬉しくない」
「えっ、嬉しくないの!?」
「まあ、そう言ってやるなよ。何だかんだ言って未空に絆されて生徒会に入ったんだからさ」
「相当熱烈だったもんね」
「……別に、絆されたわけじゃない」
「しつこいせいだろう」
「うん」
「しつこくないよ!?」
俺が生徒会に入ったことはすぐに広まった。
だからと言って何かが変わったわけじゃない。
生徒会に入ったら入ったで同様の陰口を叩かれる。
やってもやらなくても同じなら無駄な抵抗はしないでおこう。要は諦めだ。