歪んだ月が愛しくて1
「リカは俺のこと好きになってくれたんだよね〜」
「え、違うけど」
「違うのっ!?」
「ぷっ、振られてやんの(笑)」
「だっせ」
「残念だったね未空くん」
「もうそれ以上傷を抉らないでよぉ!」
ただあの日以来、我孫子とか言う奴には接触していない。
それが妙に心をざわつかせる。
「でも良かった」
「何が?」
「だって立夏くんが楽しそうなんだもん」
「え…、」
楽しそう?
「……俺が?」
「うん。最初の頃と比べたらずっと笑うようになったもん」
「………」
俺が信じられないと言う目で見つめれば葵だけじゃなく希までもがケラケラと笑い出した。
「立夏くんは変わったよ。何か人間らしくなった」
「てか素に戻ったって感じ?」
人間らしく…。
確かに聖学に来た頃は全てのものを寄せ付けないようにしていた。
感情が動かないように全ての感情を押し込んで。
でも彼等と関わるようになっていつの間にか押し込むのをやめて開き直っていた。
捨てても捨てなくても一緒なら抵抗するだけバカバカしい。
「立夏くんが転入して来てくれて良かった」
きっと、皆もそう…。
「だなっ」
「じゃなきゃ一緒にいねぇよ」
そう言われて嬉しいと思う自分がいる。
でも同時に恐怖を抱く。
失うことが怖い。
それは身を持って知っている。
だから独りでいることを望んでいた。
失う怖さを知った上で一緒にいる勇気なんて俺には残っていなかったから…。
「ね、寂しくないでしょう?」
でも、どうも俺は諦めが悪いらしい。
「……寧ろ煩い」
失ったものをまた欲しがるなんてどうかしてる。