歪んだ月が愛しくて1



陽嗣先輩と九澄先輩の後ろから現れた会長の姿に顔を背けて小さく溜息を吐く。出たな金髪バ会長。



「尊までこっちに来るなんて珍しいじゃん。何かあったの?」

「コイツ等に無理矢理連れて来られただけだ」

「嫌ですね人のせいにして。自分から付いて来たくせに」

「いやん、王様ったら素直じゃ…「死ね」



確かにミーハーだな。どうでもいいけど。
覇王がどこで何をしていようと俺には関係ない。
でも無駄絡みして来んなら話は別だ。



「……止めてもらえません?」

「あ、バレた」



いつの間にか俺の隣に座っていた陽嗣先輩が人の頭を撫で回す。
鬱陶しいから止めてもらいたい。



「やめろよヨージ!リカが嫌がってんだろう!」

「照れてるだけだよなぁ?」

「照れてません」

「りっちゃんはツンデレか?可愛いな」

「眼下行った方がいいですよ」

「わお、それって素?それともフリ?」

「フリ?」



何の?



「陽嗣の話はまともに聞かなくていいんですよ」



そう言って今度は九澄先輩が俺の頭を撫でた。
まるで飼い犬をあやすような仕草に複雑な気分だった。陽嗣先輩よりはマシだけど。



……ん?



不意にどこからか視線を感じた。



「……何?」



先程から突き刺さる、鋭利な視線。



何?またやんの?



「ママのところには帰らなかったんだな?」

「っ、」



ハッと、会長は俺を見て鼻で笑った。
視線を感じるとは思ったがまさか初っ端から喧嘩売られるとは思わず無意識に顳顬がピクッと動く。



「怖気付いたなら今からでも辞めたっていいんだぞ」

「誰が怖気付くかよ」

「その割には今まで顔出さなかったじゃねぇか?」

「それは…、」



言い返せない。
実際何かと理由を付けて生徒会に行かなかったのは事実だ。



「尻尾巻いて逃げ出したと思ったが…」

「……誰が逃げるか。アンタこそ今になって俺を生徒会に入れたこと後悔しても遅いから」

「相変わらず口だけは達者だな」

「口だけじゃないって証明してやりますよ」

「どうやって?生徒会室にも顔出さねぇくせに」

「ハッ、だったらこれからは毎日嫌ってほど行ってやるよ」



互いに視線を逸らさない、俺と会長。

視線を逸らしたら負けを認めることになる。

それだけは絶対に嫌だ。誰が負けるものか。相手がこの人なら余計に…。



「言ったな」

「、」



ニヤリと、会長は口角を上げる。



あ、その顔…。



その笑みに既視感を覚える。
このやりとり前にもあったな…、なんて冷静に分析しているくせに何故か背筋に冷たいものが走った。



「はい、そこまでです」



すると俺と会長の間に誰かの手が割り込んで来た。



「尊、やり過ぎですよ」

「りっちゃん相手に大人気ねぇぞ」

「リカが可愛いからってちょっかい出すなよな!」

「出してねぇだろうがボケ。俺はそこまで悪趣味じゃねぇよ」

「リカのどこが悪趣味なんだよ!?見た目も中身も完璧じゃん!サイコーだよ!」

「いや、どんな感想だよ?エキサイトし過ぎだろうが。ほれ見ろ、りっちゃん引いてんぞ?てか眼鏡のせいで見た目判断とか無理じゃね?」

「見た目で人を判断するものじゃありませんよ。大切なのは中身ですからね」

「どっちもだよ!てか九ちゃん何サラッと好感度上げようとしてんの!?いくら九ちゃんでも抜け駆けは許さないよ!?」

「あははっ、誤解ですよ」

「……腹黒め」

「おや、何か言いましたか?」



ギャーギャーと未空と陽嗣先輩に続いて九澄先輩までもが笑い出す。
それに加えて会長の口角がほんの少し上がったようにも見えた。



(好き勝手言いやがって…)



お前等の好みなんてどうでもいいんだよ、と会長に負けない仏頂面のまま胸中で毒突いた。


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