歪んだ月が愛しくて1
「てか、りっちゃんの朝飯ってそれだけ?」
不意に陽嗣先輩は俺の手元にあるカップを指差してそう言った。
「そうですけど」
「少なくね?この前を思ったけど」
「あ、ヨージもそう思う?」
「確かに少ないですね。いつもそうなんですか?」
「朝は食べられないので」
「りっちゃんって見た目によらず小食なんだな」
「普通です」
見た目って何だよ。
俺ってそんなに太って見えるのか?
「仕方ねぇな。ここはお兄さんが一肌脱いであげようじゃねぇの。ほら、口開けてみ?」
「、」
……何だそれは。
陽嗣先輩の突然のそれに思わず顔が引き攣った。
「「「キャアアアアアア!!!!!」」」
同時に黄色い悲鳴が一層強まる。
「イヤー!何なんだよアイツ!?」
「陽嗣様にあんなことさせるなんて許せない!」
「僕の陽嗣様が穢れる!」
等々と中傷の声が多数。
生徒会と関わるとはこう言うことかと改めて感じた。
「……何ですか、それ」
「カツ」
違ぇよ。
「あっ、それ俺の!」
いや、そうじゃなくてね。
何で俺がそのカツを陽嗣先輩に食べさせてもらわないといけないんだよ。
「……意味分かんない」
「だから俺が食べさせてあげるって言ってんの。ほら、あーん」
うわっ、本当に言ったよこの人。
羞恥心とか持ってないわけ?
「結構です。自分で食べられますから」
「いいから、いいから。遠慮すんなって」
してねぇよ!
どっからどう見たらこれが遠慮してるように見えるんだよ!?
マジで眼科行くことをオススメするわ!
「りっちゃんこっち向けって。あー……いっだぁああ!!」
途端、俺にあーんを求める陽嗣先輩の顔が歪んだ。
何が起こったのかと思い足元に視線を向けると会長の長い足が陽嗣先輩の足を踏み付けていた。しかも踵で。いったそ…。
そんな中、未空だけは「俺のカツ…」と漏らしながら陽嗣先輩の手から床に落ちたカツを悲しげに見つめていた。
そんなこの世の終わりみたいな顔しなくてもいいのに。