歪んだ月が愛しくて1
「会長、今なん…「リカ!」
そう言い掛けた時、未空の言葉が遮った。
すると未空はとんでもないことを言い出した。
「俺もリカにあーんしたい!」
「………はい?」
「はい、あーん!」
「………」
デジャヴ?
何を言い出すかと思ったら未空までそんなバカなことを…。
これではさっきの二の舞だ。
「……ガキじゃないんだから自分で食えるよ」
「えー!さっきはヨージにさせてたのに!」
させてないから。無理やりだから。
「ヨージは良くて俺はダメなの?」
「ゔっ…」
椅子に座っているせいか上目遣いで俺を見つめる未空に言葉が詰まる。
無意識か、それとも確信犯か知らないけど未空の言動が周囲を煽っているのは明白だった。
「イヤー!未空様までそんなことをっ!?」
「僕の未空くんから離れなさいよ!」
「平凡のくせに生意気なんだよ!」
「鏡見たことあるの!?」
……聞こえてるっつーの。
「そのくらいにしてやれ」
するとそんな俺の気持ちを察した頼稀が俺の頭を掴んで未空から遠ざけた。
「コイツの立場も考えろ」
「………」
頼稀の言動が意外だったのか、未空の瞳が一瞬揺らいだ。
「助かった…」
「親衛隊に警戒しろって言った手前こう言うのは俺の役目だからな」
「やっさし〜」
「揶揄うな」
揶揄ってるつもりはない。
頼稀が優しいのは本当のことだ。
こんな俺を気に掛けてくれて俺の正体を知りながらも秘密を共有してくれている。
恨まれることはあっても優しくしてもらう資格なんてないはずなのに。
これが優しくなかったら何?聖人?俺からしたら頼稀の優しさはそんな域だ。
「……何か、優しくね?」
「「は?」」
あ、ハモッた。
「何で頼稀がリカに優しいの?可笑しくない?」
「……別に、普通だろう」
「………」
え、何でそこで睨み合うの?
……何で?