歪んだ月が愛しくて1
未空と頼稀の間に流れるピリピリとした空気にすかさず仲裁に入ったのは希だった。
「あー…もう何勘ぐってんだよ未空。いくら立夏のことが好きだからって男の八つ当たりはみっともないぞ」
「ぶぅ〜」
「ほら、もうこんな時間だから早く教室に戻ろうよ」
「頼稀も行くぞ」
「………」
そう言って葵が未空の手を取る。
俺と頼稀も希に肩を抱かれながら教室に向かって歩き出そうとした、その時。
「待て」
会長の腕を掴まれた俺はその場で足を止めた。
「……何?」
「話はまだ終わっていない」
さっきは自分からだんまり決め込んだくせに。
「放課後、生徒会室に来い」
命令口調かよ。
……何かムカつくな。
「何で?」
「何でもだ」
「お前それ説明になってねぇから」
「煩ぇ。テメーは黙ってろ」
「陽嗣が煩いのは分かりますが貴方の説明不足は否めませんよ」
「チッ…」
「立夏くん、放課後に集まってもらいたいのは今後の生徒会の活動について皆で協議したいと思ったからです。立夏くんは生徒会に入ったばかりで、しかも転入生ですからまだここの行事も把握してないと思いましたので」
九澄先輩の言う通り俺の生徒会に対する知識は乏しい。
生徒会に入ったからには適当なことはしたくないが何となく彼等の思い通りになるのが嫌だった。
「嫌ってほど来るんだろう?」
クッソ、余計なこと思い出しやがって。
「それとも何か予定が入っていましたか?」
……これは分かってて聞いてるな。この策士。
「九ちゃん安心して。今日は何が何でも絶対にリカのこと連れて行くから」
「宜しくお願いしますね」
「おう!」
そう言って俺達は食堂を後にする。
未空の言葉に頼稀が反応したのは分かったが俺は気付かないふりをして希に引かれるがまま歩き出した。