歪んだ月が愛しくて1
一方、教室内では…。
「フッ、貴様は僕をそんなに怒らせたいのか。そうかそうか、なら………死ねぇええええ!!!」
その言葉と同時に御手洗くんは未空に向かって駆け出した。
その手には掃除用のモップが握り締められていた。
「あははっ!何で走ってんのー?鬼ごっこ?じゃあみっちゃんが鬼ね!」
「誰が鬼じゃあぁあああ!!!」
……うん、ある意味鬼だね。
「始まったか」
「……何あれ?コント?」
「コントって言うか習慣?」
「C組の名物だよね」
あれが?
ご当地キャラみたいに言われても全然可愛くないんだけど。
可愛くないと言ったのは決して容姿のことではない。
綿菓子のようにふわふわしたクリーム色の短髪に黒色の猫目の御手洗くんは誰が見ても称賛するような美しい容姿だ。
可愛い系代表の葵とは対照的の美人さん、それが御手洗くんの第一印象だった。
話したことはないから彼がどんな人なのかは分からないが未空に対する態度を見る限り見た目通りの性格ではなさそうだ。
「立夏くんはあれ見るの初めて?」
「初めて…」
「大体週4であれやってるぞ」
「ほぼ毎日じゃん。てか希いつの間にこっち戻って来てたの?」
「さっき!避難して来た!」
「いや、見れば分かるけど」
自己防衛力高いな。
「あれは大体放課後にやってるからお前が初めて見るのも当然だ」
「当然?」
「サボり魔で尚且つ放課後になったら決まって屋上で誰かさんと逢引してるお前なら知らなくて当然ってこと」
「……嫌味か」
「本当のことだろう」
未空vs御手洗くんの戦いは続いている。
ただ互いに攻防戦を繰り返しているように見えても実際はそうじゃない。
一方的に怒声を撒き散らし物騒な物を投げまくって攻撃する御手洗くんとは打って変わり、未空はただ笑いながら走り回っているだけだった。
「……何で未空は抵抗しないの?」
それは純粋な疑問だった。
「何でって言われてもな…」
「何でだろうね」
「………」
上から希、葵、頼稀が躊躇ったように渋い顔をする。
「……何、聞いちゃ不味かった?」