歪んだ月が愛しくて1
「いや、そう言うわけじゃねぇが」
「じゃあ何でそんな顔してんの?」
「………」
俺の質問に頼稀は無言で窓の向こうの空を見上げた。
まるで俺の質問に対する言葉を探しているようだった。
「未空くんは優しいから…」
代わり答えてくれたのは葵だった。
でもその言葉の意味が分からない。
未空が優しいのは知ってる。
だって未空はこんな俺に「仲間になろう」と言ってくれた人だから。
「優し過ぎなんだよな、未空は」
益々分からない。
「アイツは御手洗に何もしない」
「何も?」
「……いや、出来ねぇのか。アイツは御手洗を嫌いになれねぇから」
「………」
「ま、お前には理解出来ないだろうけどな」
理解出来るはずがない。
他人が他人のことを全て理解するなんて無理に決まってる。
もしそんなこと出来る奴がいたらそいつは神か仏だ。
俺にはそんな神業みたいなこと出来ないし出来るようになりたいとも思わない。
「そんな顔すんなよ」
「……どんな顔だよ?」
「鏡を見てみろ」
「チッ」
「おい、素出てんぞ」
「態とだよ」
そう言って態と素っ気無い態度を取りフイッと顔を背けた。
見兼ねた希がすかさず頼稀のフォローに入る。
「いいんだよ、立夏は気にしなくて。これは未空の問題だし本人が気付かなきゃ意味ないことだからさ」
「意味?」
希の視線の先には御手洗くんに追われる未空がいた。
楽しそうに笑っている未空だが果たしてそれは本物の笑顔なのだろうか。
……分からない。
いや、分からなくなった。
「……時間が掛かってもいいんだよ」
ただ、これだけは分かる。
『引かないで…くれるん、だよね?』
未空もまた何かに囚われているんだろうな。
それが何なのか俺には分からないけど。
「大丈夫。未空くんなら心配要らないよ」
「心配」とか「大丈夫」とか言葉にするのは簡単だ。
でもそれをあえて本人に言わずに我慢しているのはその人のことを想っていないと出来ることじゃない。
……ああ、そうか。
3人は待ってるんだ、未空が自分でそれに気付くのを。
本当は言葉にしてちゃんと言いたいのに我慢して見守って支えようとしていた。
伊達に中1から一緒にいるわけじゃないってことか。
(幸せ者め…)
「てか、立夏は人のこと心配してる場合かよ」
はて、何のことやら。
希の言葉に首を傾げると。
「そうだよ。神代会長にあんなこと言って大丈夫なの?」
「あんな………ぁ、」
「ぷっ、忘れてたのかよ」
言い訳も出来ない。
「お前結構素出てたもんな」
ははっ、ご尤もで。
「立夏くんって普段は可愛いのに怒ると格好良いんだね」
「可愛い…?ねぇ、それ褒めてんの?」
「勿論だよ!」
「眼鏡萌えサイコー♡」
「いや、意味分かんねぇんだけど」