歪んだ月が愛しくて1
金色の王様
ピッとボタンを押せばガタンと音を立てて缶が出る。
あれから未空と一緒に生徒会室に行ったはいいものの呼び出した張本人が行方不明と言うことで急遽会長の捜索に赴いたわけなのだが、はっきり言って面倒臭い。いや、本当に。
何で自分が捜しに行かなければいけないのかとか、テメーで呼び付けたくせに何すっぽかしてんだとか、子供じゃねぇんだから1人で帰って来いよとか口を開けば文句しか出て来ない。
そんな気持ちを紛らわそうと飲み物を買うために北棟の1階の下駄箱近くに設置された自販機に立ち寄った。
自販機と言っても世に多く出回っているような100円で購入出来る代物ではなく品物・値段が規格外なものばかり。
自分の金なら躊躇するのだが文月さんの金なら思う存分使って困らせてやろうと思い結構頻繁に利用していた。
それなのにこんな時に限ってお目当てのものは売り切れで仕方なくカフェオレを買ってみたが。
「……微妙」
一口飲んだが甘過ぎる。
ブラックがないなら炭酸にするべきだったか。
「ま、たまにはいっか………ん?」
190グラムの缶を片手に生徒会室に戻ろうとした時、裏庭の方で何かが動いているのが窓から見えた。
人影?それも一つや二つではない。
少し開いた窓の向こうからバタバタと複数の足音も聞こえた。
俺は妙な胸騒ぎがして裏庭に向けて足を速めた。
裏庭の茂みは結構深い。
その上もう日が落ちかけているため空は茜色と化し近くまで行かないと人の顔も判別出来ないくらいだ。
ガサガサと茂みを押し退けて気付かれないように近付く。
人影は6、7、8……と結構群がっていた。しかも立ち位置からして1対7のように見える。
(情けない…)
7人の男子生徒が1人を取り囲むようなに見える配置だが何故かその距離は広い。それでは当たるものも当たらないだろうに。
別に喧嘩を推奨しているわけじゃない。寧ろ喧嘩なんてするべきじゃないし、くだらないとさえ思っている。
だから本当は仲裁に入るべきなんだろうが、その中心にいる人物が目に留まり止めに入るタイミングを失ってしまった。
その人物は後ろ姿しか分からない。でも茜色の中でも一際目立つキラキラと輝く金髪が印象的だった。
「―――で、俺に何の用だ?」
俺の耳にドスの効いた声が入って来た。
でもどこかで聞いたような声だった。
「何の用だと?」
「調子に乗ってんじゃねぇぞ神代!」
「自分の胸に手を当ててよく考えてみやがれ!」
……ん?
か み し ろ ?