歪んだ月が愛しくて1



目が眩むような金色の光。

まるでそこだけが暗闇から浮かび出ているようで思わず顔を顰めた。



(……俺には、眩し過ぎる)



「盗み聞きとは随分と悪趣味だな」



突如茂みから現れた俺に会長は訝しげな表情で近付いて来た。
誰もいないと思っていたところから突然人が現れたら誰だって驚くだろうが、悪趣味とは心外だ。



「……勘違い。俺がここに来たのはアンタを捜すように言われたからだよ」

「頼んだ覚えはねぇが?」

「アンタじゃなくて九澄先輩に頼まれたんだよ」



どうやら俺が足引っ掛けたことには気付いてないらしい。セーフ。



「………」

「……何?」



途端、会長は何故か険しい顔をした。
その証拠に鋭い瞳が俺を捉えていた。



「チッ」



会長は舌打ちすると俺から視線を逸らして中央棟の方へと歩き出した。



「……何なんだよ」



その後ろ姿に文句を言う。
いきなり舌打ちされる意味が分からない。



聞き耳立てたくらいでキレるか普通?



徐々に会長との距離が開いて行く。
行く先が一緒だから仕方なく会長に続いて歩き出そうとした時、地面に蹲る男子生徒が目に留まった。
気絶しているみたいだがこのままにして置くわけにも行かないしとりあえず起こして散らすか。
そんなことを考えていると不意に後ろから腕を掴まれた。



「……お前、何やってんだ?」



会長だった。

しかもその表情は先程と同様に険しい。



「これを起こそうかと思って」



そう言って男子生徒達を指差すと。



「必要ない」

「でもこのままだと…」

「寝かしとけばいい」

「……怪我してるけど?」

「放って置け」



それが出来たら端っから素通りしてるよ。



「行くぞ」

「だから行かないって」



繋がれた手を逆に引くと会長の動きが止まった。



「アンタは先戻ってて」

「……お前は?」

「これを起こしたら戻るよ。本当は自分でケツ拭いて欲しいけど当事者のアンタがいつまでもここにいると何かとややこしくなりそうだからアンタは先に生徒会室に戻ってて。これは俺が何とかしとくから」

「当事者?」

「人のもんに手出したんでしょう。そりゃ恨まれるって」

「は?」

「おまけにあんな風に煽るなんて…。あれじゃあ向こうだってキレるに決まってんじゃん」

「………」

「兎に角ここは何とかするからアンタは早くここから…「出してねぇ」

「は?」

「だから身に覚えがねぇって言ってんだよ」

「でも、さっき…」

「確かにバーに行って何人かの女に絡まれたがマイなんて女は知らねぇし犯ってもない」

「………」



……それ、今俺に言われても困るんだけど。
本当に潔白ならさっきの連中に言えば良かったじゃん。俺に言うことじゃなくない?
まあ、あの状況で本当のことを話したって聞く耳持つとは思えないが。



「おい、信じてねぇだろう」

「……どうでもいいから手離して」

「あ?」

「だからアンタが女とヤろうがヤらなかろうが興味ないって言ってんだよ」

「チッ」



その舌打ち、今日何回目だよ。

短気は損気って言葉知らないのか?



「ちょっと待ってろ」



すると会長はズボンのポケットからスマートフォンを取り出してどこかに電話を掛け始めた。



いや、早く戻れよ。

何が待ってろだ。人の話全然聞いてねぇだろう。



「俺だ」



オレオレ電話か。


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