歪んだ月が愛しくて1



暫くして通話を終えた会長は手に持っていたスマートフォンをズボンのポケットに仕舞いながら「行くぞ」と言って再び俺の手を引いて歩き出した。しかも今度はさっきよりも強い力で。



「人の話聞いてた?あれをどうにかしないと…」

「連絡はした。直に回収しに来る」

「回収?」

「後のことは奴に任せて置けばいい」



自分でやったくせに他人にケツ拭かせるとはいいご身分だことで。

まあ、最後の奴やったのは俺だけど。



「……手、離して」

「………」



そう言っても一向に離す気配が見られない。

……意味が分からん。



グッと、そんな会長の手を力任せに振り払うと会長は驚きを含ませた表情を見せた。
徐に自分の手を見つめて、気が済んだかと思えば今度は俺の顔を凝視するもんだから俺も負けじと睨みを利かせた。



「……何?」

「………」



喧嘩売ってるなら買うぞ。



「……何故、あの場所が分かった?」



どうやら違うらしい。



「あそこにいたのは偶然。これを買ってたら裏庭に人が集まってるのが見えて気になって様子を見に行っただけ。別にアンタのストーカーじゃないから安心して」

「………」



これ、と言って手に持っていたカフェオレを見せ付ける。
口に合わなかったから殆ど残ったままのカフェオレを一気に胃に流し込み殻になった容器を近くのゴミ箱に投げ捨てた。



「あのさ、さっきみたいなのってよくあるの?」

「ああ」

「何で?アンタってそんなに恨み買ってんの?」

「まあ、天敵だからな」

「天敵?」

「さっきの連中は生徒会を目の敵にしてる反生徒会組織だ」

「反、生徒会…」



あれ、それどこかで…。



「………ぁ」



我孫子が言ってた例のチームか。

すっかり忘れてた。



「通称GD」

「G、D…」



無意識に復唱していた。
まるでその存在を確かめるかのように。



「奴等の目的は定かじゃない。唯一分かるのは俺達にとって正反対の存在ってことだけだ」

「………」



GDについては生徒会も把握出来ていないのか。
正直我孫子のことを話すべきか迷っていた。
結果的に接触したがただ勧誘されただけでそんな大した話はしてないし、話したら話したでまた「だから?」とか言われそうで躊躇させた。
……やめよう。もし本当に「だから?」とか言われたらムカついてぶん殴りそうだし。



「お前も用心しておけ」

「用心?」

「生徒会に入った以上お前も奴等の標的だからな」

「………」



そう言って会長はどうでもいいと言わんばかりに俺から視線を外した。


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