歪んだ月が愛しくて1
「何ブツブツ言ってんだ?独り言か?ハゲるぞ」
「……ハゲてねぇよ。アンタがハゲろ」
「ハゲねぇよ。ハゲてんのはお前だけで十分だ」
「だからハゲてねぇって。年功序列って言葉知らないの?」
「意味分かって使ってんのか?それにハゲは遺伝だぞ」
「年齢だって関係あるだろう?」
「いや、遺伝だ」
「年齢」
「遺伝」
先程までの気まずい雰囲気はどこへ行ったのやら気付けば俺と会長は無意味な言い争いを繰り広げていた。
「……ねぇ、いい加減やめない?この不毛な会話」
「お前のせいで無駄に体力を消耗した」
「アンタが先に喧嘩売って来たんだろう」
「バカにバカと言って何が悪い」
「バカって言う方がバカでしょう。てかバカなんて言われてねぇよ」
「じゃあハゲか?」
「アンタなっ……………やめた。バカらしい」
マジで体力の無駄。バカバカしくて付き合ってられない。
それにこれ以上言い返したら何だか会長の思い通りになりそうで癪だった。
……こんな不毛な会話、久々かも。
何の嫌がらせか知らないが会長のせいで思い出してしまった。
あれは忘れたい記憶じゃない。
正確に言えば忘れたくても強烈過ぎて一生忘れられそうにない記憶だ。
だから一度は封印しようとした。
でも新たに出会った彼等のせいでその鍵が壊された。
お陰で制御出来ないものまで溢れ出て来てどうしようもない。
「……聞いてもいいですか?」
……本当、どうしようもない。
だから対処方法を教えて欲しかった。
「何だ?」
『…ごめん、シロ……』
「……喧嘩って、楽しい?」
会長に聞くことじゃないのは分かってる。
でも先程の会長の姿に過去の自分を思い出してしまった。
「あ?」
会長が素っ頓狂な声を上げる。
その顔は正しく人をバカにしていた。
でも仕方ない。
「だって、笑ってたから…」
「………」