歪んだ月が愛しくて1



「いつも未空に任せっきりですいません。その分こちらのことは任せて下さいね」

「九ちゃん…」



九ちゃんの手が俺の頭を優しく撫でる。
出会った時から変わらない柔らかな微笑みが俺の苛立ちの矛先を変えようとする。
こんな優しい人がヨージを選ぶなんてどうかしてるよ。



「てかりっちゃんはどうしたんだよ?一緒に捜してたんじゃなかったのか?」

「一緒だったけど中々尊が見つかんないから手分けして捜してたんだよ。そしたら今度はリカまでいなくなって…」

「で、寂しくて帰って来たってわけか」

「違ぇよ!」



俺は兎か!

別に寂しくなんかねぇもん!



「兎に角、立夏くんが迷子になる前に連絡してあげて下さい。こちらももう終わりますから」

「………」

「未空?」

「何だんまり決め込んでんだよ。とっとと連絡しろって」

「………ない」

「あ?」

「……だから、知らないの」

「知らないって、まさか…」

「お前…、りっちゃんの連絡先知らねぇの?」



2人の言葉がグサグサと突き刺さる。
それに追い討ちを掛けるかのようにヨージが腹を抱えて笑い始めた。



「ぎゃはははっ!だっせー!お前りっちゃんから教えてもらってねぇのかよ!友達のくせに!」

「煩ぇな!これから聞こうと思ってたんだよ!」



それでもヨージの笑いは止まらない。
隣の九ちゃんも苦笑いを浮かべていた。



「でも未空が連絡先を聞いていなかったとは意外ですね」

「……俺だって何度も聞いたよ」



でもリカはスマートフォンを常に持ち歩くような今時の現代っ子じゃなかった。
部屋で充電してるとかで殆ど学校には持って来ないし、偶に持って来ても頼稀に邪魔されたり機会音痴を理由に中々聞けなくて今に至っていた。



「あんなにご執心のくせに連絡先すら聞けてねぇなんてどんだけ純情チェリーだよ」

「チェリー言うな!俺はヨージと違って軽くねぇんだよ!」

「人をチャラ男みたいに言うんじゃねぇよ」

「どっからどう見てもチャラ男じゃないですか」

「コイツが純情過ぎんだよ」



……純情、なのかな。

ただ間違いたくないとは思ってる。



『          』



リカには嫌われたくないから…。



「では立夏くんには僕の方から連絡しておきますね」



………は?



「え、今、何て…」



聞き間違い、だよね?



「ですから立夏くんには僕が…」

「何で九ちゃんがリカの連絡先知ってんのさ!?」

「勿論本人に聞いたからですよ(少し強引でしたけど)」



え、何それ…。



全然意味分かんないんだけど!?

今の傷心返してよ!!


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