歪んだ月が愛しくて1
「……どうでもいいけどよ、いくら何でも尊の奴遅くねぇか?アイツ今日のことちゃんと分かってんだろうな?」
「朝確認したから分かってると思うけど…」
「全くどこで油を売ってるんでしょうね」
「案外りっちゃんも一緒だったりしてな」
「まっさか」
あの尊が?
……有り得ない。
「あ、今有り得ねぇって思ったろう?」
ヨージは俺を指差してケラケラと笑った。
人の顔見て面白がってるけどヨージだって内心では有り得ないって思ってるくせに。
「だってみーこだよ。他人のことなんて一切興味ないあの尊がリカのこと気にするわけないじゃん」
「くくっ、違いねぇ」
「しかし結果的に立夏くんを生徒会に追いやったのは尊ですよ」
「追いやったって…」
「まるで悪者扱い」
その言葉に俺とヨージが苦笑する。
まあ、本当のことだから否定出来ないけど。
「今までの尊からは考えられませんが、尊が立夏くんに興味を抱いているのは確かだと思いますよ」
「アイツがね…。どう言う心境の変化やら」
「………」
何となく九ちゃんの言葉に頷けなくて窓から空を見上げた。
どこまでも蒼い空は雲一つない晴天だった。
それが何とも忌々しくて思わず目を背けて下方に目をやると、そこには有り得ない光景が広がっていた。
「………う、そ」
俺の言葉に2人も窓から顔を出して下を見た。
「わお…」
「有り得ないことが起きちゃいましたね」
中庭を横断する、尊とリカ。
しかもちゃっかり手まで繋いでいた。
「……凄い。本当に連れて帰って来た」
「へー、やるじゃん」
「中々の兵ですね」