歪んだ月が愛しくて1



「これぜーんぶリカのために用意したんだよ!」



未空はギュッと俺の腰にしがみ付き、まるで褒めて褒めてと言わんばかりに頭を摺り寄せて来る。甘えん坊か。
あるはずのない犬耳と尻尾まで見え………ん?



ん?



「犬、耳…?」



フリーズ。

そして自分の目を疑った。



「俺、リカに喜んで欲しくて頑張ったんだよ?褒めて欲しいワン」



何で犬がここに…じゃなくて、何で未空は犬耳を付けているんだ。しかもちゃっかり首輪まで付けてるし。そう言う趣味なの?



「なーにが褒めて欲しいだよ。人の手柄横取りしてんのはお前の方じゃねぇかよピョン」



そして陽嗣先輩の頭には………兎?

しかもピョンって、それ絶対間違ってるでしょう。



「意外と似合いますね……うさ耳」



どこがだ!

寧ろ似合わな過ぎて不気味だわ!



斯く言う九澄先輩の頭には……何もない。
と思いきやまるで舞踏会にでも行くかのようなレースマスクを付けていた。



……うん。凄い似合ってる。

ある意味似合い過ぎてヤバイね。大人のフェロモン大放出だよ。



「九澄、お前とうとう目まで腐ったか?」



そして最後に会長はと言うと、ソファーに踏ん反り返るのはいつものことだがその端正な顔には本来あるはずのない鼻眼鏡が…。



鼻、めがね…。





鼻 眼 鏡 !?



「ひっ、人のこと言えん、のか……くくっ!!」

「みーこも、スゲー似合って、るよ……ぷぷっ!!」

「……中々の完成度ですね」



呆気に取られる俺を余所に他の3人は肩を震わせながら必死で笑いを堪えていた。




「………」

「……何だ?何か文句でもあんのか?」

「……………ぶはっ!!」



ダメだ、耐えられない。



てかアンタこそ何だよそれ!?

王様が鼻眼鏡ってダメでしょう!

色々とヤバイだろう!色々と!

それじゃあ覇王の威厳もクソもねぇから!完全に失ってるから!



「な、何の嫌がらせ…?」



これで笑うなって言う方が無理な話だ。



「嫌がらせじゃねぇ」

「じゃあ罰ゲー…「でもねぇよ」



だったら何さ。



「ねぇ、リカ嬉しい?凄い?」

「……凄い」



色んな意味で。
覇王ともあろう者が見事なイロモノ集団と化している。
未空と九澄先輩は似合ってるからいいとして(陽嗣先輩はギリだけど)会長の鼻眼鏡はダメでしょう。完全にアウトだよ。


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