歪んだ月が愛しくて1



「リカに喜んでもらえて俺も嬉しいワン」



まだやるか。



「ええ、喜んで頂けて何よりです」

「これを素直に喜べと?」



……無理だ。

寧ろ腹が捩れそうなんですが?



「つーわけで、りっちゃんにはこれな」

「わっ」



陽嗣先輩の大きな手が頭上に乗る。
それと同時に何かを被せられた。



「俺達の恥ずかしい姿を堪能したんだ。お前の恥ずかしいところも見てやんねぇとな」



その台詞と共に背後に立つ会長が俺の首に何かを巻き付けた。
チリンと鈴の音がする。
嫌な予感がして恐る恐る頭上に手を持っていくと、そこにはあるはずのない山が二つあった。
そして決定的なのが…。



「い、今なら死ねる!リカの猫耳ヤバイ!可愛過ぎる!持って帰ってもいい!?」



俺の恥ずかしい姿に未空は興奮して賛辞を送る。
そして他の3人も俺の恥ずかしい姿が置きに召したのか食い入るように魅入った。
ふざけんな。今なら死ねるはこっちの台詞だ。



「立夏くん良く似合ってますよ。想像以上ですね」

「やっぱりりっちゃんには猫だよな。そのダセー眼鏡が逆にいいわ」

「リカ!にゃーって鳴いて!お願い!」

「鳴かねぇよ!」

「………悪くない」



これのどこが悪くないのか教えてくれ。頼むから。



「ちょいちょい尊様よぉ〜。さっきはスルーしてやったけどやっぱりりっちゃんに何かしたわけ?おてて繋いで仲良く帰って来ちゃってどうしちゃったのよ?」

「あれは見過ごせませんね」

「くだらねぇ」

「リカ一生のお願い!にゃーって鳴いて!“未空のこと大好きだにゃ”って上目遣いでお願い!!」

「言うかアホ!」



未空の感極まる叫びに俺も負けじと声を荒げた。
でもお陰で色々と吹っ切れた気がする。



「ああ、もう…っ」



ソファーに置いてあるクッションに顔を埋めて声を殺して叫ぶ。吹っ切れたと言うよりヤケだ。
そんな俺の奇行に4人はぽかんとしていた。



「……いつまでそこに突っ立ってる気?祝ってくれるんじゃないの?」



テーブルに乗っていた空のシャンパングラスを持ち上げて言う。
すると4人は互いに顔を見合わせて笑いながらソファーに座りそれぞれのグラスにシャンパンを注いだ。
五つのグラスが高々と掲げられた。
口火を切ったのは九澄先輩だった。



「では今回立夏くんが正式に生徒会に入ってくれたことを祝してささやかではありますがこのようなパーティーを開かせて頂きました。存分に楽しんで下さいね」

「どうも…」

「折角なのでそれぞれ今後の抱負を。はい、未空からどうぞ」

「え、抱負?急にそんなこと言われても…。えっとー…リカともっと仲良くなりたいです。……あれ?作文?」

「バッカ、普通こう言う時は生徒会の抱負だろうが。てことで俺は今年こそ白衣の天使とお友達になる!これ一択っしょ!」

「それを生徒会の抱負にしないで下さい。僕の抱負は一致団結です」

「一番似合わねぇだろうお前には。無難に健康第一とかにしとけ」



四対の視線が向けられる。





「……………世界征服」





直後、彼等の喉を潤すはずだったシャンパンが盛大に噴き出された。

大爆笑と共に。


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