歪んだ月が愛しくて1
「てかさ、りっちゃんって俺達のことどこまで知ってんの?」
「どこまでって…」
「俺達が“覇王”って呼ばれてるのは知ってるよな?」
「はい」
覇王とは生徒会の別称だ。正式には生徒会執行部と言うらしい。
覇王と呼ばれる者は会長・未空・陽嗣先輩・九澄先輩の4人だけ。そして覇王の頂点に立つ会長は“王”として崇められている。
(覇王を束ねる王、か…)
「……やけに大袈裟ですね」
「何が?」
「だって“覇王”なんて仰々しいから」
「いつからそう呼ぶようになって誰が言い出したのかは分かりませんが、その由縁は大体想像出来ますけどね」
「由縁?」
「大方俺達の家柄を見てそう言ってんだろう。無駄に金持ってるからどこからともなく蛆虫共が湧いて来やがる」
「僕達に媚売れば安泰だと思っているんでしょうが」
「ま、そう言うわけにはいかないよね」
「くだらねぇ」
つまり彼等はとんでもなくお金持ちの家柄ってことか。
何か羨ましいとか妬ましいを通り越して逆にこの環境に慣れつつある自分が恐ろしい。
「会長と九澄先輩の家が凄い金持ちだって言うのは聞いたけど、未空と陽嗣先輩も?」
「否定はしねぇよ。俺んとこは神代の傘下の中でも筆頭だから傘下の中でも別格扱いされてんの」
「んー…俺もそんなとこ」
「マジか」
それが覇王と呼ばれる由縁。
……でも、本当にそれだけだろうか。
「でもこれからはリカも覇王の一員なんだからね!」
「え、嫌だ」
「えっ、嫌なの!?」
「何でだよ?」
「何でって…、寧ろアンタ達を“覇王”って呼ぶ連中がそれを認めないと思うけど」
金と権力に群がる連中が彼等を“覇王”と呼び讃えるのであれば俺の存在はそれに該当しないことになる。
俺なんかを讃えたところで何の得にもならないだろう。
「リカは生徒会に入ったんだから覇王だよ!誰が何と言おうと覇王!俺達は仲間なんだから!」
「仲間…」
その単語を耳にするだけでムズムズする。
聞き慣れた単語だけに彼等の口からそれを聞かされると違和感しかない。