歪んだ月が愛しくて1
「あの時リカが教えてくれたことは今でもちゃんと覚えてるよ。リカが俺のことを引かないでちゃんと見てくれたから…。だから俺は開き直っても忘れない。自分がして来たことを今になって後悔しても遅いけど…、それでも後悔して分かったこともあるから」
「………」
「リカにもあるんでしょう、後悔したことが」
「、」
『…ごめん、シロ……』
「な、で…」
まただ。
未空とアイツが被って見える。
「見てたら分かるよ」
……怖い。
―――シロ。
失うことが怖い。
それは身を持って知っている。
だから独りになろうと決めていたのに…。
「……そんな顔しないで」
ポンッと、未空の手が俺の頭に乗る。
「守られたくなかったら、それでもいいよ」
その重みも、声も、温かさも、アイツとは違う。
「勝手に守るから」
でもそんな未空にどこか安心している自分がいた。
「何で、そこまで…」
そして思い知る。
アイツはもうここにはいないのだと。
アイツだけじゃない。
何よりも大切だった彼等を手放したのは紛れもない俺自身だった。
「だってリカは仲間でしょう。リカが何かに苦しんでるなら助けたいって思うのが普通だよ」
「………」
それなのに寂しさよりも、悲しみよりも、憎しみよりも、それ以上に俺の心を支配するのは別の感情だった。
「言ったでしょう。僕達はただ立夏くんと仲良くなりたいだけだと」
「言って置くけど、今更拒絶したってもう手遅れだぜ」
「にししっ、俺達のしつこさナメないでよ」
惑わされるな。
絆されるな。
「男に二言はねぇんだろう?」
穏やかな会長の声が俺の鼓膜を揺らす。
そんな彼の漆黒の瞳を見つめると今までにないくらい妖艶に微笑んでいた。
その手がゆっくりと伸びて来て俺の頬を優しく撫でる。
「……上等」
大事なものに触れるかのように。
ただただ、優しく。