歪んだ月が愛しくて1
早速貰った校章を付けた。
無駄に金掛けてるだけありそれなりの重みがある。
「無くすなよ。ついでに生徒手帳もな」
ついでかよ。
「無くしませんよ、ガキじゃあるまいし」
「無くさなくても盗られる可能性もあるから気を付けろよ」
「盗られる?自分のがあるのに?」
理解出来ない。
「勘違いすんなよ。お前に渡した校章は一般の生徒が付けているものとはわけが違う。分かるか?それは特別なもんなんだよ」
「……何で?」
「お前が文月の親族だから」
紀田先生は俺と文月さんの関係を知っている。
文月さんの友達だし担任だから仕方ないがこれ以上は公言したくない。
文月さんが理事長だからってのもあるが一番の理由は文月さんが“鏡ノ院”だからだ。
「嫌そうだな」
そんなの決まってる。
「嫌を通り越して最悪です」
「くくっ、聞いていた通りだな」
「……何聞いたの?」
「大したことじゃねぇけど、昔話をちょっとな」
他人に余計なことをべらべらと話してんじゃねぇよあの野郎。
しかも昔話って一番の黒歴史じゃねぇか。
まあ、流石にあのことまでは話してないと思うが。
「まあ、アイツとの思い出話は置いといてだ。その校章を持ってると色んなところで優遇されんだよ。中央棟って言う限られた役職に就いている人間しか出入り出来ない場所にもそれがあればすんなりと入れるってわけだ。その他にも使い道はあるがそれは追々な」
「追々?」
「一遍に説明しても分からねぇだろう」
「確かに」
金持ちが考えることは分からない。いや、分かりたくもないが。
大体理事長室に自由に出入り出来たところで全然嬉しくないし逆に文月さんとの関係を気付かれかねない。つまり俺にとっては迷惑以外の何者でもないのだ。
「万が一盗まれた場合はお前の校章のデータだけを書き換えればいいだけなんだが、文月が面倒臭ぇから死ぬ気で守れだとよ」
一々嫌味な奴だな。
それしか言えねぇのかよ。
「言われなくてもそのつもりです」
誰が文月さんなんかの世話になるものか。