歪んだ月が愛しくて1
「立夏、ソース付いてるぞ」
「え、どこ?」
「ここ」
中盤までは静かに食事出来ていたと思う。
頼稀達3人はいつものこと、未空と陽嗣先輩も少しの言い合いはあったもののいつもよりは断然に静かで過ごし易かった。
そんな中で事件は起きた。それは頼稀が俺の口元に付いたソースを指摘した時だった。
「反対。……違う、もっと下」
「下?」
頼稀は自分の頬を指差して俺に教えてくれたが中々行き着くことが出来ずもたついていると見兼ねた陽嗣先輩が俺の顎を掴んで視線を合わせて来た。
「ここだよ」
………え。
そう言って陽嗣先輩は俺の口元に舌を這わせてミートソースを舐め取った。
今、何して…。
「ご馳走さん」
「っ!?」
見せ付けるかのように赤い舌を覗かせて妖艶に微笑む、陽嗣先輩。
次の瞬間、食堂は爆発的なざわめきに包まれた。
でも今の俺にはそんなこと気にしている余裕なんてなかった。
「な、にを…っ」
咄嗟に口元を押さえて陽嗣先輩を睨み付けた俺の顔は羞恥のあまり顔から火が吹いていたかもしれない。
「へー…そう言う顔も出来るんだ」
どう言う顔だよ!?
そう言ってやろうとした時、俺の頭の上を何かが通った。
「天誅!」
「だはっ!」
それは未空の腕だった。
未空は陽嗣先輩の頭上に手刀を食らわせた。
その反対では手にグラスを持ったままの頼稀が椅子から立ち上がっていた。
……おいおい、何するつもりだよ。
「何がご馳走さんだ!俺のリカに馴れ馴れしく触んな変態!」
未空に叩かれた陽嗣先輩は頭を抑えて目にうっすらと涙を浮かべていた。
しかし何故かそれ以上に…。
「俺なんて…っ、リカにあーんもさせてもらえないのに…」
……ん?
「俺だって…、俺だってリカのご飯粒食べたかったのに!ヨージのバカァアアアア!!」
いや、何でそうなる。