歪んだ月が愛しくて1



「僕だって手ぶらじゃ帰れないよ…」



しかし男子生徒は頼稀の嫌味なんてお構い無しに上品な笑顔を浮かべて受け流す。これは梃子でも動かない気だな。



「初対面だから自己紹介しないとね。僕は2年A組の白樺真冬(しらかばまふゆ)。覇王親衛隊の幹部を務めています」

「親衛隊…」



と言うことは…、



「リンチ?」

「違うよ」



即答かよ。



「藤岡くんに話があるだけだよ。折角覇王様のご好意で生徒会に入れて頂けたんだから僕達のことも知ってもらった方がいいと思ってね」



入れて頂けた、ね…。

別に覇王親衛隊のことなんて知りたくもない。寧ろ関わりたくない。



……でも、



「立夏、行く必要ない」

「そうだよ。どうせ話なんて碌なもんじゃないんだから」

「立夏くんはここにいてっ!」



白樺のことなんてどうでもいい。

相手にするだけ無駄だし相手にしたところであの人を付け上がらせるだけだ。



ああ、火種を蒔いた張本人の狙いはこれだったのか。



「立夏」



もし俺の考えが正しければいつまでもこの状態は宜くない。

この3人のためにも俺はここから離れるべきだ。



……となれば。



「手短に済ませて」



頼稀の前に出て白樺と向き合う。
すると頼稀は俺の肩を掴んで声を荒げた。



「立夏!」

「……大丈夫」

「何が大丈夫だ!?お前俺の話聞いてなかっ…「大丈夫だから」



グッと、頼稀は言葉を詰まらせる。
それを良いことに頼稀の手をやんわりと剥がす。



「立夏…」

「未空には適当に誤魔化しといて」



未空にバレると何かと面倒臭い。

余計なものまで蒔かれるのは困る。



「分かってくれて嬉しいよ」

「……案内して」



俺は白樺の後に続いて廊下を歩く。
その後ろ姿を不安げな眼差しが見つめていたとも知らずに。















「―――いいの?立夏をあのまま行かせちゃって」

「そうだよ!あの人達は何するか分かんないんだよ!?」

「良くねぇよ」

「じゃあ何で行かせたんだよ?もうちょっと強引に引き止めても良かったんじゃないの?」

「……アイツが大丈夫だって言ってんだ。信じるしかねぇだろう」

「それはそうだけどさ…」

「心配だよ。それにあの人って確か御幸先輩の…」

「2年生で唯一の幹部だもんな」

「……何か引っ掛かることでもあるのか?」

「じ、実は、さっき食堂で…―――」


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