歪んだ月が愛しくて1
「何様のつもり?」
途端、白樺は貼り付けていた仮面を剥がす。
そんな白樺に内心笑みを堪えるのに必死だった。
何様って、そんなの…、
「俺様?」
「っ!?」
そんな俺の発言に白樺が顔を引き攣らせると更に周囲が騒めき立つ。
「お前っ、白樺さんに向かってなんてことを!?」
「もうこんな奴やっちゃいましょうよ!」
取り巻き達が子犬のようにキャンキャンと吠えるので態とらしく両耳を塞いで煩いアピールをしてやった。案の定ヒートアップしたのは言うまでもない。
「皆さん落ち着いて。藤岡くんは転入して来たばかりでまだよく分かってないんだよ。だから僕達が教えてあげようよ。覇王様に近付いたらどうなるか…」
耳を塞いでも聞こえてしまう雑音が不快で仕方ない。
「賛成です!」
「思い知らせてやりましょう!」
……面倒臭い。
「藤岡くん、この学園で僕達覇王親衛隊に逆らったらどうなるか…、分かってる?君はやっちゃいけないことをしたんだよ」
本当に面倒臭い。
よくもこんな面倒で喧しい連中を嗾けてくれたな。
(あの人は一体何がしたいのやら…)
「未空様に無理言って生徒会に加えてもらったんだってね。……本当図々しい」
……は?
その言葉に耳を疑った。
「未空様が可哀想!」
「無垢な未空様を誑かすなんて最低だな!」
……ちょっと、待て。聞き捨てならない。
未空に頼んで生徒会に入った?俺が未空を誑かした?
「この身の程知らずが!」
ふざけんなよ。冗談じゃない。
誰が好き好んで生徒会に入るものか。
こっちは散々拒否ってたって言うのに人の領域にズケズケと土足で踏み込んで来たのは彼等の方だ。
文句があるなら覇王に直接言えばいいものを卑怯で臆病な連中は決して覇王に逆らうことはないのだろう。それが余計に俺を苛立たせた。
(卑怯なのは俺も一緒だけど…)
でも未空を誑かした覚えはない。
どっちかと言うと誑かされた気分だ。