歪んだ月が愛しくて1



「人をおちょくるのもいい加減にしろよ!年下のくせにナメたこと言いやがって!」

「実年齢なんて関係ねぇだろう!こっちだって精神年齢低い奴にでけぇこと言われたくねぇんだよ!」

「んだと!?」

「何だよ!そっちがやる気ならこっちだって!」



殴って黙らせるのは簡単だ。

でもサンドバッグも殴り過ぎるとダメになる。



ガンッ



「っ!?」

「っ、み、尊…、サマ?」



だから仕方なく目の前の執務机を蹴り上げて一喝。



「煩ぇ」

「「す、すいません…」」



少し睨みを利かせれば萎縮した2人が大人しくなる。
その様子を見ていた九澄が大袈裟に溜息を吐く。



「ふざけている場合じゃありませんよ。責任どうこうよりも一刻も早く立夏くんを捜さないと」

「捜すってどこをだよ?」

「立夏くんのスマホのGPSを追います。未空、行けますね?」

「うん!俺が迎えにい…「俺が行く」



未空の言葉を遮って席を立つ。



「え、尊が…?」

「は?マジ?」

「……珍しいですね、貴方自ら動くなんて。どう言う風の吹き回しですか?」

「………」



九澄に指摘されて蘇るのは先日の些細なやり取り。



『誰がバカだ。てかそんなことアンタに関係ないだろう』

『関係ないだと?俺が何のために…っ』



「……確かにな」



何のためかって?

そんなの俺が知りてぇくらいだ。



ただ…、



『生徒会には入らない。……もう、俺に構わないで』



誰にも見つからないようにひっそりとした雰囲気が。



『死にませんよ』



今にも消えてしまいそうな儚さが。



『男に二言はねぇ。今度は俺の意志で生徒会に入る』



凛とした澄み切った存在感が。

何ものにも埋められなかった俺の中の空白を一瞬だけ満たしてくれた。



だから…、



「確かめに行く」



この目で。



アイツに会えば何か分かるような気がした。

身体中の血が沸騰したような沸々と湧き上がる、この感情も。



「九澄、居場所が分ったら連絡しろ。未空と陽嗣は残りの書類でも片付けとけ」



それを確かめるために、もう一度。


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