歪んだ月が愛しくて1
藤岡を見つけるのにそう時間は掛からなかった。
「何をしてる」
男が藤岡に殴り掛かろうとした時、咄嗟に藤岡の元に駆け寄りその男の腕を掴み上げた。
すると藤岡の腕を押さえていた男達は俺の存在に気付くや藤岡の拘束を解き両手を上げて後退する。
「かい、ちょ…?」
藤岡は幽霊でも見てるような顔で俺を見上げた。
その視線を無視して藤岡に殴り掛かろうとした男を睨み付ければ男の顔が徐々に青褪めていく。
「コイツに何をしようとした?」
「み、尊様!?どうしてこちらに…っ」
「質問に答えろ。誰の許可を得てコイツを連れ出した?」
俺の声色に男はぶるっと肩を震わせながら口を開く。
「だ、だって、コイツが陽嗣様に…っ」
「陽嗣?」
ああ、コイツが白樺か。
通りで藤岡を目の敵にするわけだ。
それにしても本当余計なことしやがって…。後で覚えてろよ。
「僕は覇王親衛隊として当然のことをしたまでです!」
「当然だと?」
グッと、その言葉に無意識に力が篭る。
「何が当然だ。非公認の分際で」
「、」
「非公認なら何やっても許されると思うなよ。テメー等は覇王に刃向かった。当然それ相応の覚悟があってのことだろうな?」
「っ!?」
「か、会長!もういいって!それ以上やったら手が…っ」
「手?」
その言葉が耳に届いたのと同時に藤岡が俺の腕にしがみ付いた。
白樺の手首を掴んでいた手を緩めればそこにはくっきりと痕が残っていた。
ああ、手って、このことか…。
藤岡の焦った口調に何事かと思ったら…、だからどうしたと言うのか。
力を入れれば痕くらい付くし感情的になってる分セーブするのも忘れていた。そもそもそんなもん一々気にしていられるか。
俺の庭で好き勝手やった挙句、俺の支配下にあるお前に手を上げようとしたんだぞ?気にする価値もない。
だから藤岡の行動が理解出来なかった。
「大丈夫か?」
……は?
何野郎の心配してんだよ?
さっきまでお前を殴ろうとしてた奴だぞ?
パシッ
「触らないで!君に同情されるくらいなら僕は、僕は…っ」
白樺は地面に膝を付いて泣き崩れる。
そんな白樺を見て藤岡は焦っていたが、俺は違う。
「おい」
俺の声色にビクッと肩を震わせる。
先程のあれが余程効いたのか白樺は完全に戦意を喪失していた。
「陽嗣の親衛隊だか何だか知らねぇがコイツは既に覇王のものだ。覇王に逆らったらどうなるか、テメー等が知らねぇはずねぇよな?」
白樺は声を押し殺して泣きながら何度も頷く。
「処分は追って下す。目障りだ、消え失せろ」
「、」
そう言うと白樺は取り巻きを連れて駆け足でこの場を立ち去った。
その後ろ姿を複雑そうな顔で見つめる藤岡に俺は眉を顰めた。