歪んだ月が愛しくて1
「りっちゃ〜ん!」
「げっ」
ここにもいたか、抱き付き魔め。
生徒会室に着くなり俺を待っていたのは正面から勢い良く飛び付いて来た陽嗣先輩だった。
陽嗣先輩は俺の姿を確認すると両肩を掴んで前後に激しく揺さ振った。
「りっちゃんごめんな!俺のせいで白樺に呼び出し食らったんだって?怪我してねぇ?まさかもうバージン奪われちゃった?」
……大袈裟な。
てか男にバージンってあるの?
「立夏くん、怪我はありませんか?」
「ありません。別に何かされたわけじゃありませんから」
「へ?……何も?」
「はい」
まあ、嘘だけど。
「なーんか部活の勧誘だったんだって華道部の…。てかいつまでリカに抱き付いてんだよ!いい加減離れろよな!」
「おっと、そう簡単に離すかよ!」
「離せよ!リカにくっ付いていいのは俺だけなんだよ!」
「猿のくせに彼氏気取りか〜?」
「猿は余計だ!」
「……煩いよ」
毎度毎度飽きねぇな。
喧嘩するのは構わないけど俺を挟んでやるのはやめてくれない?
「勧誘、ですか…」
未空の言葉に納得がいかなかったのか、九澄先輩は目を細めて何か言いたげな表情を浮かべて会長を見つめた。
「……何だ?」
「いえ、何も」
「言いたいことあるならはっきり言え」
「だから何もありませんて今は。もうせっかちですね」
「………」
会長と九澄先輩は互いに視線を逸らさない。
何かよく分からないがオーラが黒い。特に九澄先輩が。
それでいて爽やかに笑ってるから余計に不気味だった。