歪んだ月が愛しくて1
宣戦布告
「そう言えば今日って何の集まりなんですか?」
俺の一言に4人の視線が一斉に集まる。
「今日集まってもらったのは明日の打ち合わせのためです」
「打ち合わせ?」
「だって明日は新歓だよ!」
「新歓?」
……何それ?
「え、もしかしてリカって新歓知らないの!?」
「知らない」
「何でだよ」
「何でって言われても…」
「いくら毎年のことでも普通クラスで説明とかあんじゃねぇの?」
「なか…「あったよ。リカが寝てただけ」
クソ、遮りやがったな。
「へー、りっちゃんって意外とサボり魔なんだぁ?」
「リカは見た目に寄らず不良なんだよね」
「まんまじゃねぇか」
「どう言う意味だコラ」
会長にだけは言われたくない。
「新歓とは新入生歓迎会の略です。主旨はその名の通りの生徒会主催のイベントのことです」
「イベント?」
「そう!明日やるんだよ!」
また唐突な…。
てかその打ち合わせを前日にするってのもどうなの?ちゃんと仕事してんの?
「期間はその日だけなんだけど午前の部と午後の部に別れて何か適当にゲームやって終わりみたいな感じの緩いイベントなんだよ」
「緩いの…?」
「緩いよ。もうガバガバ」
「その言い方はやめろ」
……うん、確かにやめた方がいいね。
未空の口からは聞きたくないよ。
不意に隣にいた陽嗣先輩が体重を掛けて来たかと思えば「だりぃなー」と言って俺の肩に手を回して来た。
本当ここの連中は距離感ぶっ壊れててどう反応していいか分からなくなる。
そんな陽嗣先輩に特段反応することなく俺は顔だけ動かしてその表情を窺っていた。
「……生徒会らしかぬ台詞ですね」
「だって面倒じゃん。俺面倒なことって嫌いなんだよね」
「それ言っちゃダメでしょう?」
「え〜」
「はいそこっ!リカにくっ付くな!」
「うっそん!気付かなかった!ヨーコ無意識てへぺろ!」
「嘘じゃねぇよ!白々しいな!てか、その顔でてへぺろとか言うなよな気持ち悪いんだよ!」
「ヨーコ…?」
「そこじゃねぇだろう」
「ふふっ、立夏くんは少々天然のようですね」
「違いますけど?」
不名誉な発言を訂正している間に陽嗣先輩は未空によって剥がされた。助かった。
「そんで今年は何やんだよ?」
「今年はあれじゃん。ほら……かくれんぼ!」
「それは去年ですよ。今年は午前の部にオニごっこを、午後の部には肝試しを行います」
「散々人のこと言っといてテメー等も把握してねぇのか」
待って、そのチョイス何?
どこのお遊戯会?
「オニごっこと肝試しって…」
小学生のお遊びじゃあるまいしこの歳になってまでオニごっこなんてしなきゃいけないの?
百歩譲って肝試しはいいとしてもオニごっこはないわ。ダル。陽嗣先輩じゃないけど面倒臭ぇな。
「あれ、もしかしてりっちゃんって怖いのダメな人?だったら俺が一緒に回ってあげようか〜?」
「え、リカ怖いのダメなの?だったら俺が…っ」
「結構です」
「即答!?」
「えー、お約束じゃねぇの?」
未空と陽嗣先輩の申し出をきっぱりと断る。
期待に添えなくて悪いが俺は暗所恐怖症ではない。勿論お化けや妖怪とか言った非現実的なものは元から信じていない。
「それで未空と立夏くんには明日のことで事前に話して置きたいことがあったのですが…」
「何ですか?」
「……いえ、やっぱりやめて置きましょう」
「「え?」」
そこまで言っといて?
思わず未空と顔を見合わせた。
「ふふっ、明日までのお楽しみです」
何それ、こわっ…。
「九ちゃん意味しーん」
「深い意味はありませんよ。それよりも折角立夏くんが生徒会に入ってくれたんですからもっと親睦を深めませんか?」
「親睦?」
「立夏くんともっと仲良くなりたいと言うことです。ダメですか?」
そう言って優しい微笑みと共に綺麗な顔が近付いて来る。
「……ダメじゃない、です」
やめて。そんな綺麗な顔で近付かないで。
こっちは会長のせいでお腹一杯なんだよ。
「ふふっ、良かったです」
遊ばれてんな、俺…。