歪んだ月が愛しくて1
「なあ、尊も会計が良いと思うよな?」
未空は1人掛け用のソファーに座る会長の首に抱き付きながら猫撫で声を出す。
そんな未空の腕を会長は邪魔だと言わんばかりに剥ぎ取ってそれでも視線を俺から外さない。
「……ダメだ」
「えー、何でだよ?」
「コイツには庶務をやってもらう」
「しょーむー?」
「娼婦だろう?」
「庶務ですよ」
庶務ってあれだよな。
運動部で言うマネージャー的存在で雑用全般が主な仕事の別名パシリ。
「勿論、俺専属のな」
……は?
「「はあぁぁああああ!?」」
俺の台詞を遮って未空と陽嗣先輩が耳元で喚き出す。
……ほんっと煩い。
「な、何で尊の専属なんだよ!?納得いかない!!」
「同感!独り占め反対!」
「決定権は俺にある。お前等がいくら喚いたところで覆す気はない」
「尊だけずりーよ!」
「うわっ、せっこ!それでも生徒会長サマかよ!?」
「生徒会長サマだからだろうが」
俺が会長専属の庶務?
……え、嫌だ。嫌過ぎる。普通に無理。
「……冗談じゃない」
「あ?」
「何で俺がアンタ専属のパシリになんなきゃいけないんだよ。そんなのやるくらいなら会計や書記の方がまだマシだ」
「お前は自分で選ぶことを放棄した。だから俺が決めてやったまでだ」
「放棄したんじゃなくて希望はないって言っただけだよ」
「同じじゃねぇか」
同じじゃねぇよ!
コイツ耳付いてんのか!?今の発言のどこが同じなんだよ!?
「それに会計や書記はもういる。消去法でもお前が庶務になることは必然だ」
「っ、……横暴かよ」
「何とでも言え」
「卑怯だぞ尊!そう言うのを職権乱用って言うんだぞ!」
「おーぼー変態ムッツリスケベー」
「吊るすぞ?」
未空と陽嗣先輩のブーイングに九澄先輩が加勢する。
「珍しいですね。貴方が自分から欲を出すなんて」
「ハッ、そんなんじゃねぇよ」
「貴方が決めたことに文句はありませんよ。ただ立夏くんの意見も無視しないで頂きたい。それはきっと貴方のためでもありますから」
「………」
その一言に会長が俺へと視線を移す。
「……文句あるのか?」
「ある」
ないわけねぇだろう。
一々上から目線だな。どっかの嫌味野郎にそっくりだ。
不機嫌バリバリに即答すると会長の口角が妖艶に上がる。
そして…、
「なら、勝負するか?」
それは思い掛けない提案だった。