歪んだ月が愛しくて1



九澄Side





「なら、勝負するか?」



尊の意外な発言に驚いたのは僕だけではなかった。



「……勝負?」

「そうだ。九澄は勿体ぶって言わなかったが明日の新歓でやるオニごっこでお前は逃げる側に入ってる。詳しいルールは明日説明するがオニに掴まった奴はそいつの言うことを一つ聞くって言う罰ゲーム付きだ」

「は?」

「何それ!?聞いてないんだけど!?」



先程の機嫌の悪さはどこへ行ったのか、尊は傲慢な笑みを浮かべながら立夏くんを挑発する。



「俺がお前を捕まえてやるよ。お前を捕まえることが出来たら俺の勝ちで大人しく俺専属の庶務として働いてもらう。但し制限時間までにお前が誰にも捕まらずに逃げ切れたらお前の勝ちだ。勿論他の奴に掴まっても条件は同じだ。どうだ、この条件で勝負するか?」

「………」



やるかと言われて即答するのは未空くらいでしょう。
立夏くんは下顎に手を添えて何やら考える素振りを見せるが、尊はそれを急かすかのように言葉を続ける。



「自信がないなら降りても構わねぇぞ。張り合いねぇのも萎えるしお前が大衆の面前で大恥掻くだけだからな」



(ああ、この男は…)



その言葉が立夏くんの闘争心に火を点けた。



「……上等。その勝負受けてやるよ」



ニヤリと、尊の口角が上がる。
立夏くんは気付いていないようですが、見て下さいよ尊のこの顔。
さも悪戯に成功した子供のような笑みを浮かべるではありませんか。これでは未空のこと言えませんね。
とは言えこんな楽しそうな尊を見るのは初めてなので僕としては面白い限りですけど。
その顔…、悪い癖が出てますね。
本来他人に執着しない尊がそう言う顔する時は要注意だ。どうせ碌なこと考えてない。まあ、今回で言えば立夏くん関連でしょうからとやかく口を挟むつもりはありませんけどね。僕としても立夏くんには生徒会にいてもらいたいですから。そのためには多少頑丈な首輪を着ける必要があるようですしね。



(どっかの誰かさんのためにもね…)



「でも俺からも条件がある」

「条件?」

「会長が勝った時の俺の罰ゲームが専属の庶務なら俺が勝った時の会長の罰ゲームだって当然決めても良いんですよね?」

「勿論ですよ」

「好きにしろ」

「うーん…」

「バカかお前。考えてから言えよ」

「………それ」

「あ?」

「立夏くん、それとは?」

「俺は“お前”なんて名前じゃない。……決めた。俺が勝ったら俺のことちゃんと名前で呼んで下さい」


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