歪んだ月が愛しくて1
「あの、もう行ってもいいですか…?」
「はい、気を付けて行って来て下さい」
「だーい丈夫!俺が頼稀のとこまで送って来るから!」
「いいよ、すぐそこなんだから」
「いいから、いいから!」
未空は有無を言わさぬ口調で強引に立夏くんの手を引っ張って生徒会室を出て行った。
そんな2人の仲睦まじい様子を尊だけが不機嫌そうに目で追っていた。
「あーあ、ありゃ帰って来ねぇな…」
「でしょうね」
それが分かっているから尊も気が気じゃないんでしょうね。
まあ、僕としてはどっちに肩入れするつもりもありませんが。
「いいんでちゅか〜?おたくのお猿さんが発情期みたいですよ〜?」
「死にたくなきゃ今すぐその口閉じろ」
「同感です」
「いやいやマジでさ。冗談抜きでアイツが尊以外にあんなにベッタリなの初めて見たぜ」
「気色悪ぃこと言ってんじゃねぇよ」
「ハッ、実際お前だってビビったくせに」
『……お、れ、……み、み、く…』
初めて会った時の未空を思い出す。
あれは僕が聖学に転入して暫く経った頃。尊を訪ねて聖学に来ていた未空は常に周囲に対して警戒心剥き出しでそのくせ尊の後ろに隠れてビクビクと怯えている子供だった。
今の未空からは想像も出来ない姿に無意識に笑みが漏れる。
未空の著しい成長の速さに驚くもののやはり心が発展途上なのは否めない。
まだまだ巣立てそうにありませんね。まるで父親の気分……おっと、それは尊の役目でした。
「そう言えば白樺くんの件ですが、部活の勧誘と言うのは本当ですか?」
「さあな」
「は?」
……やはり。
「僕の記憶が正しければ白樺くんは新聞部だったはず。華道部には所属していませんよね」
「知らん」
「知らんって…、今更何言ってんだよ?りっちゃん帰しちゃったじゃねぇか?」
「……黙認したと言うわけですか」
「黙認?まさか。この俺がそんな手緩い真似すると思うか?」
「貴方がそんな生温い男じゃないことはよく知ってますよ。だからこそ今回の貴方の言動が理解し難いんです」
「買い被り過ぎだ」