歪んだ月が愛しくて1



黙認した理由について尊は断固として口を割ろうとしなかった。
しかし何かを隠しているのは明白だった。先程の立夏くんも陽嗣との会話の中で目が泳いでいたので白樺くんとの間に何かあったのは間違いないでしょう。



(大方予想は付いていますが…)



分からないのは何故尊が白樺くんを擁護したのかだ。

あの尊が率先して他人を庇うとは思えない。



……いや、有り得ない。



「で、白樺の処分は?」

「……まさか不問に付すとは言いませんよね?」



そこに誰かの意志が介入しない限り“王様”は唯我独尊を突き進む。
中途半端な優しさなどこの男に限って有り得ない。
本来神代尊と言う男はそう言う人間だ。



それなのに…、



「表立って処分するつもりはない。約束しちまったからな」

「それはそれは、一体どなたとどのような約束をしたのでしょうね」



やはり立夏くんですか。

分かってましたけど。



「へー、りっちゃんのお願いなら聞いてあげるんだ。やっさしー」

「寝言は寝て言え」



陽嗣の指摘は強ち間違いではない。

それは尊の中で“藤岡立夏”と言う存在が確立された証拠だった。



「それに約束と言ってもあくまで表向きだ」

「……白樺出版ですか」

「あ、やっぱいつものパターン?」

「陽嗣」

「へいへい。白樺出版には俺から圧掛けとくよ」



尊が動く。立夏くんのために。

「誰かのため」なんて尊は認めないでしょうが…。



しかし俄かに信じられなかった。
あの尊が律儀に立夏くんとの約束を守ろうとしていることも、立夏くんに執着していることも。少なくとも僕の知っている尊はそんな人間ではなかった。



……動き出している?



少しずつ、一歩一歩と。

彼の中で何かが変わろうとしている。



「本当に興味深いですね…」



立夏くん、君は一体何者なんですか?


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